『未来企業』 ‐レジリエンスの経営とリーダーシップ(リンダ・グラットン 著)

『未来企業』 ‐レジリエンスの経営とリーダーシップ

『未来企業』 ‐レジリエンスの経営とリーダーシップ(リンダ・グラットン 著) 

著 者:リンダ・グラットン
訳 者:吉田 晋治
出版社:プレジデント社
発 行:2014/08
定 価:2,000円(税別)


【目次】
1.変化を糧に成長する企業とは
2.内なるレジリエンスを高める
3.社内と社外の垣根を取り払う
4.グローバルな問題に立ち向かう
5.リーダーシップを再定義する

  • ■社内、地域、グローバルの三つの領域における現代の企業のあり方を論じる

     めまぐるしく変化する現代社会では、個人の働き方も、企業などの組織のあるべき姿も変わっていかざるをえない。新しい局面における個人の働き方の変化を示したベストセラー『ワーク・シフト』の著者による本書では、企業が未来に向けたレジリエンス(強靱さ、柔軟性、回復力)を備えるために、何にどのような方法で取り組むべきかが論じられる。
     一つの企業が影響を及ぼす領域は、三重の円としてイメージできる。もっとも内側は「社内」、真ん中の円は「社内と社外の境界」、具体的には地域社会やサプライチェーンとの関わりだ。そしてもっとも外側の領域は「グローバルな社会問題」である。
     社内のレジリエンスをつくるうえでとくに重要なのは人的資産だ。たとえば従業員の勤務における自由度を高めることで彼らの精神的活力を高めることができる。またインターネットを活用しコミュニケーションを活性化させるプラットフォームをつくることも有効だ。

  • ■地域の発展や福祉に貢献するとともに、協働してグローバルな問題に取り組む

     企業は常に地域社会と深く関わっていることを自覚し、地域のために何ができるかを考えていくべきだ。通販サイト、ザッポス・ドットコムは、2011年にラスベガスの中心地にオフィスを移転。その設計にあたっては、ラスベガスの市街地を発展させるための方策が配慮された。また日本のヤクルトは、長年にわたりヤクルトレディが地域の高齢者宅を訪問し目配りをするという社会貢献を果たしてきた。
     グローバルな社会問題に対しては、国連などの公的機関と企業が協働して取り組むプロジェクトが目立っている。オランダの栄養食品会社DSMは世界最大の人道的活動組織である国連WFPチームと協力して、栄養が不足している地域に栄養補助食品を支給するなど、同社の研究力とイノベーション力を役立てている。さらに、2012年2月に立ち上げられた「レジリエンス・アクション・イニシアティブ」は、多業種の大企業が協働し、都市のレジリエンスを高めるためのプロジェクトだ。

  • ◎著者プロフィール

    ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。経営学界のアカデミー賞とも称されるThinkers50ランキングのトップ12に選ばれている(2011年)。フィナンシャルタイムズ紙では「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞される。組織のイノベーションを促進するHot Spots Movementの創始者であり、仕事の未来を考えるグローバル企業のコミュニティ、「働き方の未来コンソーシアム」を率いる。