『「勇気」の科学』(児島 修 著)

『「勇気」の科学』‐一歩踏み出すための集中講義

『「勇気」の科学』(児島 修 著) 

著 者:ロバート・ビスワス=ディーナー
訳 者:児島 修
出版社:大和書房
発 行:2014/01
定 価:1,600円(税別)


【目次】
 1.勇気とは何か
 2.恐怖をコントロールする
 3.行動意志を強化する
 4.勇気を実践する

  • ■勇気は誰にでも習得できる「心構え」であり、倫理的な価値をもつもの

     たとえば「駅のホームから転落した人を助ける」など、私たちはメディアなどを通してさまざまな「勇気ある行動」に触れ、感動を覚える。また、重要なプレゼンや交渉など、ある程度の「勇気」が求められる場に立つことは、誰の身にも経験があるのではないだろうか。本書では、そうしたあらゆる「勇気」について、最新の心理学の知見等を紹介しながら多面的に考察している。
     勇気とは「恐れることなく危険や困難に直面する心や精神の特質」のように定義されることが多い。つまり、勇気とは行動ではなく「心構え」である。そして勇気は生まれつき備わった資質ではなく、誰にでも習得できるものだ。
     また勇気には、倫理的な価値がなければならない。銀行強盗の犯人は、確かに危険や困難に立ち向かわなければならないが、その犯罪行為を「勇気ある行動」と呼ぶ人はほとんどいない。勇気は倫理的に正しく、人の心を動かすものでなければならないのだ。

  • ■「恐怖のコントロール」と「行動意志」の二つが勇気の主要な要素

     勇気には「恐怖のコントロール」と「行動意志」という二つの主要な要素がある。この二つは独立しており、強い恐怖を抱いたままの状態で行動意志を示すこともありうる。両者の能力をそれぞれ高めることによって、我々は勇気を持つことができるようになる。
     また勇気は「一般的勇気」と「個人的勇気」に分けられる。一般的勇気とは、たとえば会社の内部告発など、誰もが「勇気ある」と認めるものを指す。一方、個人的勇気とは、「飛行機恐怖症の人がそれを克服しようとタラップを登ろうとする」など、その人固有の事情に関わるものだ。一般的勇気をもつためには、まず個人的勇気を出すところから始めるとよいかもしれない。
     恐怖をコントロールする秘訣の一つとして「自己を客観的に見る」ことが挙げられる。人前で話すときには、自分を聴衆側に置いてみる。自己中心の目線をずらしてみることで、恐怖を抑制することがたやすくなるはずだ。

  • ◎著者プロフィール

    米・ポートランド州立大学心理学部講師。勇気、強さ、幸福などをテーマにグリーンランドやインド、ケニア、イスラエルなど世界中を駆け回る。また、世界各地で年間数百人の経営者やマネージャーを対象とした、パフォーマンス管理やリーダーシップ開発などのコンサルティングサービスを提供している。Positive Acorn社代表。2014年1月、NHK Eテレの番組「『幸福学』白熱教室」に講師として出演。