『知性を磨く』(田坂 広志 著)
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■「知能」や「知識」とは似て非なる「知性」の正体に迫る
「あの人の言動からは知性が感じられる」というように使われる「知性」は何を意味するのだろうか。単に高学歴なだけでは「知性がある」とはみなされない。本書では、その「知性」の正体に迫り、それを磨きあげるための考え方と方法を論じている。
「知性」は、「知能」や「知識」とは“似て非なる”言葉だ。「知能」とは、答えの“ある”問いに対して時間をかけずに正しいとされる答えを導き出す能力を指す。それに対して「知性」とは、答えの“ない”問いの答えを探し続ける能力である。
「知識」とは、書物などから学べるものであり、言葉として表わすことができるもの。一方「知性」の本質は「智恵」である。智恵は経験からしか身につけることができない。そして智恵は言葉で表わすことができない。高学歴の人物から「知性」が感じられないのは、その人物に「知能」「知識」があっても、体験からくる「智恵」が身についていないからなのだ。 -
■七つのレベルの思考を「垂直統合」するスーパージェネラリスト
著者は、問題を解決し現実を変革することができるのは、特定の分野のスペシャリストではなく「垂直統合の知性」を備えた「スーパージェネラリスト」だという。「垂直統合」とは、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という七つのレベルの思考を切り替えながら並行して行い、それらを瞬時に統合することである。
経営者や起業家、変革に挑むリーダーであれば、多少なりともこの「七つのレベルの思考」を行っている。だが、たいてい中途半端に終わる。その一つの理由は、この七つがアンバランスであること。経営戦略には優れているが人間力を感じさせない経営者がその一例である。二つめの理由は、それぞれのレベルが深化されていないこと。第三の理由は、七つのレベルが相互にシナジーを生み出していないことだ。たとえば戦略と戦術を互いにチェックし、整合性があるかどうかを確かめることで両者のシナジーを得ることを心がけるべきである。 -
◎著者プロフィール
多摩大学大学院教授、ソフィアバンク代表。1951年生まれ。1981年東京大学大学院修了。工学博士(原子力工学)。米国バテル記念研究所客員研究員を経て、1990年日本総合研究所の設立に参画。2000年多摩大学大学院教授に就任。同年シンクタンク・ソフィアバンクを設立。2011年東日本大震災と福島原発事故の発生に伴い内閣官房参与に就任。2013年「スーパージェネラリストの七つの知性」を学ぶ場「田坂塾」を開塾。