『なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか?』  ‐「でんかのヤマグチ」の高売りの極意

『なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか?』  ‐「でんかのヤマグチ」の高売りの極意

『なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか?』  ‐「でんかのヤマグチ」の高売りの極意 

著 者: 山口 勉
出版社: 日経BP社
発 行: 2013/02
定 価: 1,575円


【目次】
 1.潰れないために「安売り」から「高売り」へ
 2.「すぐにトンデ行く」ヤマグチの営業
 3.売ってからが商売の始まり
 4.月次では遅過ぎる。「日次決算」で当たり前
 5.顧客のことは何でも知っている。「顧客台帳」の秘密

  • ■徹底したお客さまサービスで量販店と差別化

     「でんかのヤマグチ」は、東京都町田市にある小さな家電販売店である。40人ほどの社員で、2012年3月期の売上高は12億4000万円、粗利率は39.8%。ヨドバシカメラ、ヤマダ電機などが密集する家電激戦区の町田で、大手との価格競争に巻き込まれることなく小さな店が生き残ってきた理由が、本書では経営者本人によって丁寧に語られている。
     それは、徹底したお客さまサービスを続けていることである。量販店に比べて高く買ってもらった分、売った商品に対して最後まで面倒を見るという意気込みで、社員は常にお客さまに接する。例えばデジタルテレビの操作が覚えられない高齢の女性のために、毎週自宅に出向き番組の録画をしてあげるといったサービスも行っている。また、電球1個の交換でもすぐにトンデ行くなど、お客さまの困りごとをとことん手助けしている。そんな姿勢を支持してくれるお客さまも多く、ヤマグチでは売上高の65%が訪問営業によるものである。

  • ■薄利多売ではなく、「厚利長売」を目指す

     ヤマグチのサービスには「表のサービス」と「裏のサービス」がある。家電の販売や修理など、本業関係が「表のサービス」。そして、家電販売だけに限らず、顧客のちょっとした困りごとを解決したり、自ら気をまわして何かしたりすることを「裏のサービス」と呼び、力を入れている。
     「家の植木に水をあげてほしい」「急に外出することになったので、留守番を頼みたい」というような顧客からの様々な要望にも臨機応変に対応し、訪問の際に包丁研ぎ器を持参して包丁を研ぐ、外灯の清掃をするというようなサービスも日常的に行っている。
     ヤマグチが目指すお客さまとの長期的な取引関係の維持のためには、手厚い顧客サービスが欠かせないが、それができるのも、利幅が厚いからこそである。利幅を薄くして数を多く売るという「薄利多売」が一般的な量販店のあり方だとすれば、ヤマグチの戦い方は「利は厚く、長く売る」という「厚利長売」なのである。

  • ◎著者プロフィール

    でんかのヤマグチ代表取締役社長。1942年東京都生まれ。65年にパナソニック系列の電器店「でんかのヤマグチ」を創業。90年代後半、近隣への大手量販店の進出を受け、地域に密着した独自の顧客管理手法を取り入れ、訪問営業を主軸にきめ細かなサービスを提供する経営へ転換。2012年3月期の売上高は12億4000万円。最終利益は2300万円だが、粗利益率39.8%と厚く、毎期黒字を続ける。