『人生は65歳からがおもしろい』(河村 幹夫 著)
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■仕事人生から自分人生に切り替わる65歳前後は人生の大きな節目
人の一生には大きな節目が幾つかあるが、仕事人生から自分人生に切り替わる65歳前後は非常に重要な節目だ。時がくれば否応なしにその節目はやってくるが、その先をどう生きるかの羅針盤は用意されていない。本書は、執筆時77歳の著者が、65歳前後の後輩諸氏に宛てて、この不確実性がますます高まる社会の中で、明るく、賢く生き、納得のいく人生を実現できるようアドバイスを送っている。
シニアは後輩たちに負けない武器、つまり知恵と洞察力、リスクマネジメント術を持っている。また、それらを駆使して仕事をした経験も充分にある。だが、ただそれだけでは過去の知的資産であるに過ぎない。それらを将来に向かって生かすには、新しい時代の傾向や価値観の変化に注意しながら、どうすれば自分の知的要素を再活性化できるかを考えることが必要だ。人生の後輩たちに非常に有益な、だが彼ら自身ではつくれない「知恵」としての価値を持つよう、考えるのである。 -
■「自分年齢」を自分で決めたら、人生はより前向きになる
自然年齢のほかに、自分年齢というものがあってもよいのでは、と著者は提言する。定年まであと何年、という引き算的な発想をするよりも、自分の体力、気力、夢、希望などを総合的に勘案して、今の自分がそうありたいと願う「自分年齢」を自分で決めたほうが、人生はより前向きになるはずだ。著者自身は、自然年齢65歳の時に、自分年齢を55歳に設定した。それは、体力的にも知的にも実際の55歳のビジネスマン諸氏に拮抗できるよう自分の状態を保持する、という決意だった。
さらに大切なのは、この55歳は恒久的な年齢で、自然年齢のように時間の経過と共に数が増えることはない、としていること。万年55歳のつもりで生きていくのだ。自分年齢を自分で決めたら、実際の体力はともかく、気力、好奇心、理解力、知力、実行力、集中力などは自然年齢55歳のライバルたちに負けたくない、という一点に集中して努力を続けるのである。 -
◎著者プロフィール
多摩大学名誉教授。昭和女子大学監事。統合リスクマネジメント研究所長。1935年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。海外駐在を含め36年間勤務の後、多摩大学教授に転職。平成元年に著書『シャーロック・ホームズの履歴書』(講談社現代新書)で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。専門分野としているリスクマネジメント関連も含め著書多数。京浜急行電鉄(株)社外取締役、日本財団評議員など多分野で活躍している。