『「心の時代」にモノを売る方法』 (小阪 裕司 著)

『「心の時代」にモノを売る方法』

『「心の時代」にモノを売る方法』 (小阪 裕司 著) 

著者:小阪 裕司
出版社:角川書店
発行:2012/11
定価:820円


【目次】
 1.変わりゆく消費社会とたったひとつの欲求
 2.なぜ、この「現実」が見えなくなるのか
 3.「売れない」三重の問題とビジネスの未来
 4.新しいビジネス六つの成立要件
 5.ビジネスの姿が変わる三つの潮流
 6.つけるべき力、磨くべき感性

  • ■消費社会の変化によってビジネスも変化する

     世の中には「幸せを連れてくる鍋」がある。それは「ル・クルーゼ」というフランス製のもので、数万円もする高級品にもかかわらず主婦層の熱烈な支持を集めている。支持の決め手は「性能」ではなく「幸せを感じる」ところにあるという。
     このような、これまでのビジネスフレームからは一見奇妙に見える消費行動が、新しい消費社会の典型である。消費社会の変化はどう変わってきて、これからどうなっていくのか。本書では、それに伴うビジネスの変化について、例証と研究知見を引きながら様々に語られている。
     新しい消費社会は、今やそこかしこでその姿を現している。しかし一方で、その期待に応えられている企業は少ない。新しい潮流が始まってすでに30年、新しい消費は相当な量で顕在化しているが、「現実」が見えていない人も依然多い。そこには「人は見ようとするものしか見えない」「複雑すぎて見えない」そして「変化が大きすぎて見えない」という三つの典型的な原因がある。

  • ■新たな消費社会に必要な人材とは

     新たな消費社会は新たな人材を必要とする。新たな人材が磨くべきビジネス感性は4種類ある。
     一つめは手段より構造、部分よりシステム全体を見る感性である。新規顧客を集めるときにはチラシかネットかという手段にとらわれるのではなく、どのようなシステムに基づいて集めるのかという思考が大切である。二つめは短絡を捨てて因果全体を見る感性。目の前の現象が起こる原因はその近くにはないことが多い。問題を解決するときには鳥のような俯瞰的な視点が必要になる。全体を見渡すことで見えてくる因果関係に気づくことが問題解決への第一歩である。三つめはパターンをとらえモデル化できる感性。新しい社会では様々な事象が次々と生み出され、目の前に現れる。一回性の事象から普遍を洞察する力が必要となる。最後はメタレベルとベタレベルを自由自在に行き来できる感性。上から俯瞰するメタレベルと現場での実践というベタレベルの両極の思考を使えるようになることが望ましい。

  • ◎著者プロフィール

    博士(情報学)。オラクルひと・しくみ研究所代表。人の「感性」と「行動」を軸にした独自のビジネスマネジメント理論を研究・開発し、その実践企業の会である「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。「日経MJ」(日本経済新聞社)での長寿人気コラム「招客招福の法則」をはじめ、連載・執筆多数。『価格創造の思考法』(東洋経済新報社)、『「買いたい!」のスイッチを押す方法』(角川書店)、『ビジネス脳を磨く』(日本経済新聞出版社)、『「感性」のマーケティング』(PHP研究所)などの著書がある。