『聞く力』  ‐心をひらく35のヒント

『聞く力』  ‐心をひらく35のヒント

『聞く力』  ‐心をひらく35のヒント 

著 者:阿川 佐和子
出版社:文藝春秋
発 行:2012/01
定 価:840円


【目次】
 1.聞き上手とは
 2.聞く醍醐味
 3.話しやすい聞き方

  • ■数多くの対談の経験で磨かれた「本音を引き出す」ノウハウを語る

     ビジネス上でも、日常生活においても、人とのコミュニケーションには「伝える力」と同じくらい「聞く力」が必要だ。本書は、タレント、キャスター、エッセイストの阿川佐和子さんが、「週刊文春」の900回を超える連載の対談企画等の経験で磨かれた「相手の心を開き、本音を聞き出す」ノウハウについて、エッセイのかたちで語ったものである。
     『HANA-BI』でベネチア国際映画祭グランプリを取った北野武監督へのインタビューでは、思わぬことから誰にも語られたことのなかった真実が明らかになる。話し始める前に北野監督が「おしぼり」を使っていた理由を尋ねたことから、当初予定していなかったバイク事故の後遺症の話になる。そしてそこから話が広がり「事故にあった経験から『HANA-BI』が生まれた」という事実を聞くことができたのである。相手を直視し、「あれ?」と思ったことは率直に聞いたほうが良い結果が出ることがあるのだ。

  • ■聞き手と語り手が一緒に「脳みその捜索旅行」をする

     相手の心を読むのは難しいが、「私ならどうか」などと自分自身を基準に考えると理解の助けになることが多い。例えば相手が「7歳の頃から働きに出ようと思った」と言ったならば、自分が7歳だった頃はどうだったか考えてみる。「自分とは違う。何故か?」と考えることによって、相手に対する興味が広がり、より深い質問をすることができる。
     「お父さんについてお聞かせください」というテーマのインタビューを行うとする。その場合、お互いにあらかじめ質問を想定していたとしても、実際のインタビューでは、想定された答え以上のものを求めて、聞き手と語り手が一緒に「お父さん抽斗」をごそごそ探っていくといい。すると、語り手自身も忘れていた思いもかけないものが出てきたりする。人間同士の会話だからこそ、どこに行くかはわからない。聞き手は語り手の「脳みその捜索旅行」に同行し、添いつつ離れつつ、さりげなく手助けをすればいいのである。

  • ◎著者プロフィール

    タレント、キャスター、エッセイスト。1953年、作家・阿川弘之の長女として東京に生まれる。慶應義塾大学文学部西洋史学科卒、1981年『朝のホットライン』のリポーターに。1989年からは『筑紫哲也NEWS23』(いずれもTBS系)のキャスターとして活躍。1998年から『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)にレギュラー出演。1999年『ああ言えばこう食う』(集英社)で第15回講談社エッセイ賞を受賞。