『「いのちの最期」を生きる』(斎藤 忠雄 著)

『「いのちの最期」を生きる』

『「いのちの最期」を生きる』(斎藤 忠雄 著) 

著 者: 斎藤 忠雄
出版社: 現代書林
発 行: 2011/11
定 価: 1,365円


【目次】
 1.在宅医療・在宅介護の現場で
 2.クリニック開業、訪問診療、そして地域密着型介護施設の併設へ
 3.時代の要請に応じた「終末期医療」
 4.「みとりびとチーム」でスピリチュアルケアを
 5.在宅ケアネットワークづくりから「終の棲家プロジェクト」まで

  • ■「在宅医療・在宅介護」の受け皿づくりにまい進する

     多くの終末期の患者や高齢者の願いは、「住み慣れた我が家で、最愛の家族に看取られながら最期を迎える」というものである。「在宅医療・在宅介護」を促進する意図で2006年になされた「在宅療養支援診療所の制度化」および「がん対策基本法の制定」は、方向性としては彼らの願いと一致しているが、実情は大きくかけ離れたものとなっている。療養型長期入院ができなくなって退院させられた末期がん患者が、「在宅」の名の下に、まともな医療も介護も受けられずに家族共々苦しんでいるのが実情なのだ。その大きな要因は、「在宅医療・在宅介護」の受け皿となるべき「開業医」の認識不足・知識不足にあるのではないかという。
     自らも開業医である著者は、苦しんでいる目の前の患者や家族をなんとか救いたいという一心で、従来の開業医の仕事に加えて終末期医療に取り組み、ケアステーションの開設のほか「在宅医療・在宅介護」定着のためのネットワークづくりに励んでいる。本書はその活動記録である。

  • ■医者としての生き方を変えた、ある在宅ホスピス医の新聞報道

     終末期の医療や介護についての知識も経験もない著者が、在宅ホスピス医になろうと決意するキッカケとなったのは、甲府市の緩和ケア診療所のクリニック院長・内藤いづみ医師を紹介した新聞記事だった。内藤医師は、大学病院での研修医時代、医師の巡回もない病室で、点滴につながれ捨て置かれたように亡くなる患者たちを目の当たりにし、「孤独の中の死」だけはさせたくないと、在宅ホスピス医になった。その内藤医師が、91歳の膵臓がん女性患者を自宅で看取る場面を新聞はこう伝えていた。《「今からおばあちゃんは天国に旅立つの。耳は聞こえるから、そばで大きな声でお話してあげて」。子供たちは元気に声を揃えた。「おばあちゃん、ありがとう!」。「在宅ホスピスは『ありがとう』と『さようなら』が一つになるところ。次の人たちに命をつなぐ希望があるから、死は怖くないんです」》内藤医師のこの言葉に感銘を受けた著者は、やがて自らのクリニックを在宅療養支援診療所として登録するのである。

  • ◎著者プロフィール

    斎藤内科クリニック院長、医学博士。1954年福島県いわき市生まれ。新潟大学医学部卒業。アラバマ大学バーミンハム校微生物学教室客員助教授、新津医療センター病院診療部長などを経て1994年、新潟市に斎藤内科クリニックを開設。以後、2007年に小規模多機能型居宅介護施設ケアステーションるぴなす、小規模型通所施設デイサービスセンターるぴなす、08年居宅介護支援事務所るぴなす等、次々に開設。