『101歳の金言』 (日野原 重明 著)
-
■「ありがとうと死ねる」ための51の言葉
本書は、2013年に102歳を迎える著者が、前著『100歳の金言』で伝えきれなかった「人生を心豊かに暮らし、ありがとうと死ねる」ための51の言葉を記したものである。 「どうしたら100歳まで生きられますか?」とよく聞かれる著者だが、100歳はゴールではなく、通過地点だと考えている。お正月の箱根駅伝にたとえて、復路の9区(戸塚)または10区(鶴見)あたり、大手町のゴールまではだいぶ距離があると感じている。100歳を超えても、まだまだ先がある。そういう心境である。 パーティーや宴席での乾杯の際の掛け声も、右手こぶしを振り上げながら「GO! GO! GO!」と言うようにしている。みんなで前進、前へGO、まだまだ道の途中、ゴールを目指して進もう! とみんなを力づけるためである。 著者は、本書を通じて、「人生の節目は通過点、常に前を向いて前進!」と読者が自分の道を力強く歩むことを願い、エールを送っている。
-
■善意の輪を広げよう
日野原氏の大好きな言葉に、「ペイ・フォワード」がある。人から善意を受けたとき、その相手にお返しをするのではなく、誰か別の人に善意を広げていくという考え方である。
たとえば道に迷ったとき、見知らぬ人に親切に教えてもらったとする。「ありがとう」とお礼を言い、思いやりに感謝する。その後、駅の階段でベビーカーを押し、立ち往生している女性がいたら、手伝ってあげる。また別の日に、言葉がわからなくて困っている外国の人がいたら、優しく声をかけてあげる。こうして、ひとりの善意が3人に伝わり、さらに6人、9人と増えていき、善意の輪が広がる。それがペイ・フォワードだ。
日本では、見知らぬ人にも親切な心で接するペイ・フォワードのような精神は、あまり浸透していないようだ。他者に善意を伝えれば、心が温かくなり幸せな気持ちが得られる。ペイ・フォワードで助け合うと、世の中が笑顔で包まれると日野原氏は信じている。 -
◎著者プロフィール
聖路加国際病院理事長・同名誉院長。1911年山口県生まれ。京都大学医学部卒業、同大学院修了。41年聖路加国際病院に内科医として赴任。51年米国エモリー大学に留学。早くから予防医学の重要性を指摘、患者参加の医療や医療改革に向けての提言、終末医療の普及や「成人病」に代わる「生活習慣病」という言葉を提言するなど、医学・看護教育の刷新に尽力。2005年に文化勲章受章。『100歳の金言』等著書多数。