『育てる技術』 (石田 淳 著)
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■とるべき行動を教えられていない若者たち
いまの課長クラスは、企業の中にまだ体育会系的な上下関係が残っていた時代に新人だった世代である。彼らは精神論や根性論で厳しく育てられたので、いまの若手の部下に対しても同じ方法をとろうとする。「やる気を出せ」「オレが新人だった頃は?」…だが、親にさえ叱られたことがない最近の若者に、当時の方法は全く通用しない。いくらハッパをかけても効果がなく、やがて心を閉ざしたり、うつになったりする。
自分たちの新人時代には考えられなかったような部下の発言や態度に腹を立てても、何ら問題は解決しない。彼らは教えられてこなかっただけなのだ。問題の本質は部下の"態度"にあるのではなく、とるべき"行動"を教えてもらっていないことにある。
本書は、部下を管理、教育するのに、ともすれば感情論や精神論に走ることの誤りを的確に指摘、その上で、どうすれば部下が育つかを「行動科学マネジメント」の手法に基づいて、具体的に提示している。 -
■MORSの法則に基づいて指導していく
行動科学マネジメントは、部下のやる気や態度や性格などは一切問わず、「行動」だけに焦点を当て、「MORSの法則」と呼ぶ、次の4つの条件に基づいて指導していく。
・Measured:計測できる(数値化できる)
・Observable:観察できる(誰から見ても、何をしているかがわかる)
・Reliable:信頼できる(誰から見ても、それが同じ行動だとわかる)
・Specific:明確化されている(何をどうするかが明確になっている)
例えば「なるべく早く資料を作って」という伝え方は曖昧であり、上司と部下の間に感覚のズレを生じさせる。その結果、部下が「思うように動いてくれない」とイライラしたりする。だがこれは明らかに部下に問題がある訳ではなく、上司の伝え方に問題がある。「明後日の朝9時までに、会議で配る資料を10部作って」と言えば、部下はその通りに行動しようとするだろうし、上司はイライラすることもなくなるのだ。 -
◎著者プロフィール
ウィルPMインターナショナル社長兼CEO、社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事、日本行動分析学会会員、米国行動分析学会会員。「行動科学マネジメント」の専門家として、ビジネスパーソンが成長し、成果を上げる科学的手法を説く。日経BP「課長塾」をはじめ、多くの研修・セミナーで講師を務める。『教える技術』(かんき出版)『続ける技術』(フォレスト出版)など著書多数。