『問題解決をはかる ハーバード流交渉戦略』

『問題解決をはかる ハーバード流交渉戦略』

『問題解決をはかる ハーバード流交渉戦略』 

編著者: 御手洗 昭治
著 者: 秋沢 伸哉
出版社: 東洋経済新報社
発 行: 2013/05
定 価: 1,890円


【目次】
 1.交渉と日本人の交渉観
 2.欧米人の交渉観とハーバード4巨頭の交渉哲学
 3.交渉心理学
 4.ストーリーテリング

  • ■「交渉」は戦略的闘争ゲームである

     交渉とは、相手から何かをもぎとったり、限られたパイを奪い合ったりするゼロサムゲームだと思い込んでいる人は少なくない。その結果、下手な駆け引きを行い、人間関係や異文化関係、外交関係までをも損なってしまう。とくに日本人は、異文化でのビジネスや外交交渉の場において交渉下手を露呈することが多い。日本は、歴史的に「交渉」を駆け引きや謀略と同レベルと考えて、卑劣なものとして疎んじる文化風土があり、交渉ではなく「根回し」や「談合」で決着しようとする。しかし、欧米や中国のような多民族国家の文化圏においては、「交渉」は、合意を目指して意見をぶつけ合い「駆け引き」を繰り返す、闘争的・競争的行動であり、アメリカン・フットボールと同様、戦略的闘争ゲームなのである。

     本書は、ハーバード大学で開発された問題解決型交渉戦略に基づき、異文化でのビジネス交渉のキーポイントと流儀を、グローバル時代にマッチした事例を交えながら紹介している。

  • ■交渉のゴールは相手に実際に動いてもらうこと

     例えば金額交渉の際、日本人は、望んでいる金額に近い金額を最初の段階から出すが、国際社会ではこのような態度は弱腰だと見られてしまう。一方、中国人やロシア人は極端な申し出と要求を習慣的に利用する。アメリカ人は、アグレッシブな先手必勝型の交渉術を駆使する。このように極端な提案から交渉を始める交渉者は、結果的に交渉期間を延長でき、交渉相手に関する情報をより多く獲得できるほか、交渉相手の考え方を修正できる、連続的な譲歩を行う余地を多く与え、協調路線を生み出せる、などの理由から、協定締結の可能性が高いとされている。
     とはいえ、交渉においては、「人は論理ではなく感情で動く」ことも事実である。交渉のゴールつまり目標は、相手を言い負かすことではない。たとえ交渉の議論に勝ったとしても、相手が感情を害したとしたら、結果的に相手は動こうとしない。交渉のゴールは、相手に納得してもらい、「実際に動いてもらう」ことなのである。

  • ◎著者プロフィール

    御手洗 昭治:札幌大学教授。オレゴン州立大学大学院博士課程修了。ハーバード・ロースクールにて交渉学上級講座とミディエーション講座修了。日本交渉学会前会長。主な著書に『サムライ異文化交渉史』(ゆまに書房、2007年)。

    秋沢 伸哉:立命館大学教授。米国ワシントン大学法科大学院修了。株式会社資生堂、米国航空会社取締役など国際ビジネスの最前線で、国際企業提携、M&Aなどタフな国際交渉を数多く執務する。現在、日本交渉学会副会長。