『やっぱりアメリカ経済を学びなさい』(小野 亮/安井 明彦 著)

『やっぱりアメリカ経済を学びなさい』

『やっぱりアメリカ経済を学びなさい』(小野 亮/安井 明彦 著) 

著 者:小野 亮/安井 明彦
出版社:東洋経済新報社
発 行:2013/06
定 価:1,680円


【目次】
 1.アメリカ経済が立ち上がろうとしている?
 2.アメリカはオバマで変わるのか?
 3.ドルはどうなる? これからの通貨の話
 4.成長の基盤は実のところ失われていない?

  • ■「好調な住宅市場」の背景にある本質とは

     「今度はちょっと違うかもしれない」と思わせるような、明るい材料がアメリカ経済に出てきている。その光明のひとつが「住宅市場の持ち直し」で、実際、住宅販売は上向いており、着工も活発化している。ところが不思議なことに、持ち家率は低下の一途を辿っている。つまりマイホームを持てる人が増えているわけではないのだ。では、誰が家を買っているのか。著者は、自己資金の豊富な投資家だと指摘する。投資家たちは、銀行が差し押さえた物件や新築物件を購入し、それを賃貸住宅に転用する。現在のアメリカは歴史的な低金利や住宅ローンの利子控除など、住宅の投資収益率が非常に高い状況にあり、アメリカの住宅市場の回復は、賃貸需要と投資需要という歯車が噛みあって進んでいるという。本書は、アメリカのマクロ経済、金融政策、財政政策と政策・政治が専門という著者の共著だけに、アメリカ経済についての本質と幅広い知識が分かりやすく得られるよう構成されている。

  • ■「日本や世界経済はアメリカ次第」が現状

     著者は、アメリカ経済の抱える問題点のひとつは、所得格差であり、最近特に一部の富裕層の"独り勝ち"の様相が極端に強まっていると指摘している。この所得格差の拡大に大きな影響を与えていると考えられるのが、ITを始めとする急速な技術革新である。急速な技術革新が『中くらいの技術』を陳腐化し、高い技術を必要とするか低い技術しか必要としないかという『雇用の二極分化』を生み、それが格差の拡大をもたらしているというのだ。
     とはいえ、相変わらず『日本や世界経済はアメリカ次第』である。アベノミクスの3本の矢が効果を上げるかどうかも、アメリカ経済の復調に大きく影響される。もともと旺盛なアントレプレナーシップ(起業家精神)という底力を持つアメリカで何が起きようとしているのかは、日本にとって見過ごすことのできない大きな問題である。これまでも、またこれからも、アメリカ経済を知ることには大きな意義がある。

  • ◎著者プロフィール

    小野 亮:
    みずほ総合研究所 市場調査部主席研究員/シニアエコノミスト。1990年、富士総合研究所(当時)入社。1998~2003年富士総合研究所(2002年よりみずほ総合研究所)ニューヨーク事務所。帰国後、経済調査部を経て現職。専門は米国のマクロ経済、金融政策、財政政策の分析・予測。欧米経済チーム総括を兼務。

    安井 明彦:
    みずほ総合研究所 政策調査部長。1991年、富士総合研究所(当時)入社。1997~2000年在米国日本大使館専門調査員、2000~2003年富士総合研究所(2002年よりみずほ総合研究所)ニューヨーク事務所。国際調査部、政策調査部等を経て、2007~2012年みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長。2012年より現職。専門は政策・政治を中心とした米国一般。