『〈女神的〉リーダーシップ』 (ジョン・ガーズマ/マイケル・ダントニオ 著/有賀 裕子 訳)
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■これまで支配的だった男性的価値観と新しい女性的価値観を調和させることが重要
ビジネスや暮らしを取り巻く環境は以前とは明らかに違ってきており、人々の価値観やそれに基づくリーダーシップもまた、変化しているはずである。本書では世界13ヵ国の国民を対象とした独自の調査をもとに、そうした現代に見合う新しいリーダーシップを「〈女神的〉リーダーシップ」と名づけている。それは、従来「女性的」と見なされてきた価値観が反映されたリーダーシップのことであり、ギリシア神話の女神アテナを連想させることから命名された。
〈女神的〉リーダーシップを特徴づける資質は以下の通りだ。「つながり」「謙虚」「率直」「忍耐」「共感」「信頼」「寛容」「柔軟性」「弱さ」「調和」。「弱さ」とは「自分は完璧ではない、失敗もすると認める勇気」のことである。
女性的価値観の台頭は、男性的価値観が終焉を迎えていることを意味するものではない。これまで支配的だった男性的価値観に女性的価値観を取り入れ、両者を調和させることが重要なのだ。 -
■現代のビジネスでは「共感」がイノベーションや成長のカギを握る
ビジネスが、事業パートナーや顧客、サプライチェーンからなる複雑で繊細な関係性の中で行われている現代において、リーダーには、他者の言葉に耳を傾け、相手や相手の考え方に共感する力がこれまで以上に求められている。また、共感力は、イノベーションや事業成長のカギにもなる。ますます多様化する市場に対応するためには、顧客と緊密なつながりをつくり、その思いを汲み取ったうえでそれに応える商品を開発することが重要になるからだ。
「豊かさ」に対する人々の意識も変わりつつある。最近では、周囲から尊重される意見を持っていたり、人脈やそれに対する影響力を持っていることが「豊かである」とされるのだ。このような状況では、情報を抱え込むのではなく「分配」できる〈女神的〉リーダーと、女性的な流儀によるコミュニティ形成の重要性がますます増してきているといえる。 -
◎著者プロフィール
ジョン・ガーズマ :消費者行動が経済成長、イノベーション、企業戦略に与える影響を分析する社会理論家。コロンビア大学、MITスローンスクールなどで講師を務め、TEDでのスピーチは25万人に視聴されている。
マイケル・ダントニオ:ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト。ビジネス、サイエンス、スポーツと多岐にわたるジャンルで15冊を超える本を執筆。