『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』 ‐V字回復をもたらしたヒットの法則
-
■人気テーマパークにV字回復をもたらしたアイデア発想技法を語る
人気テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は2010年頃に客足の鈍化から窮地に陥ったことがある。しかし、そこからの3年間で見事なV字回復を果たした。業績不振時に入社し、数々の斬新なアイデアを打ち出すことで改革を成功に導いたのが、本書の著者、森岡毅氏である。本書では、USJでの経験を語りながら、独自のアイデア発想法を自ら解き明かしている。
2013年度のUSJは「設備投資にかけられる資金が少ない」「ライバルの東京ディズニーランドが30周年」「2014年のハリー・ポッター開業による客の行き控え」という三重苦を抱えていて、後2者により10%から20%の集客減が予想された。そこで著者は、まずアイデアの必要条件(フレームワーク)を整理する。それはすなわち「わずかな資金で実現できる」「プラス20%の集客増が可能な需要喚起の強さ」「世界最高のブランドに恥じない品質」の三つだった。 -
■とことん考え抜くことで「後ろ向き」に走ったジェットコースター
著者は、三つの条件を満たすためには「リノベーション戦略」が妥当と考えた。まったく新しいものをつくるのではなく、既存のアトラクションを改造することで新しい価値を生もうとしたのだ。そこで最初にしたことは、USJで応用できるアイデアがないか、世界中のテーマパークのアトラクションから探すこと。これは、既存のアイデアをベースに新しいアイデアを創出する「リアプライ」という手法だ。そうして、ユニバーサル・オークランドを参考に生まれたのが「スパイダーマン4K3D」だった。
それだけでは目標に届かなかった。悩みに悩んだ著者は、パーク内のジェットコースターをぼんやり眺めていた日の夜、夢を見る。そこではコースターが逆回転で再生されていた。その夢をもとに閃いたアイデアから生まれたのが「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ」。アイデアを生みだすには、とことん考え抜く「コミットメント」も重要なのである。 -
◎著者プロフィール
ユー・エス・ジェイチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、執行役員、本部長。1972年生まれ。神戸大学経営学部卒。1996年P&G入社。日本ヴィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネージャー、ヘアケアカテゴリー・アソシエイトマーケティングディレクター、ウエラジャパン副代表などを経て、2010年ユー・エス・ジェイ入社。革新的なアイデアを次々投入し、窮地にあったUSJをV字回復させる。2012年より現職。