『話しておきたいことがあるんだ』(古森 剛著)
-
■45歳の誕生日を機に子どもたちに「伝えておきたいこと」を書き綴る
人は40代、50代に差しかかる頃には、それまでのさまざまな経験から培われた「生き方」や「考え方」を確立していくものである。本書は、45歳の誕生日を期に、寿命が尽きるまでに著者が自分の子どもたちに「伝えておきたいこと」を書き綴ったものだ。人生、お金、仕事、人間関係、恋愛・結婚から宇宙や生命の存在まで、あらゆることをテーマにしたそのユニークな内容は、広く若い世代に向けたメッセージにもなっている。
著者は「お金の使い方」について「最低限の衣食住を満たして余ったお金の使い方」に、その人の哲学が表れると言う。自身の場合は、お金を「経験」「記憶」「思い出」など、自分の脳の中にしか残らないものに変えるのが好きだという。「最低限の衣食住」を超えたところに、人間と他の動物を分けるものがある。その人間ならではの「脳の可能性を広げる」ことにお金を使うことが、精神の豊かさ、将来への希望につながるのだ。 -
■生命の正体は、万物が変化するなかで「変わりたくない」という意思
著者は「生命の正体」は「変わりたくないという意思」ではないか、という独自の考えを語る。宇宙は常に変わりつづけ、あらゆる物質は形を変えていく。しかし生命は、次の世代にコピーを残し「変わらない形態」を継続しようとする。「変わりたくない」ということを表現したものが「遺伝子」だ。さらに考えれば、宇宙というものは「変わり続けたい力」と「変わりたくない力」のバランスで成立しているのではないか?
また、著者は多様性(ダイバーシティ)が集団が長期的に生き延びるために欠かせない要素だということを強調する。長い間の環境変化に対応するには、いろいろな考え方や行動パターンが必要だからだ。そのことを踏まえ、著者は子どもたちに「他人の個性を尊重すること」の大切さを説く。ここでいう「尊重」とは「受け止める」「許容する」「我慢する」ということ。冷静な議論によって「違い」を乗り越えることが大切なのだ。 -
◎著者プロフィール
マーサージャパン株式会社代表取締役社長。1968年福岡県生まれ、大分県育ち。一橋大学(社会学部)、ペンシルバニア大学ウォートン校(MBA)を卒業。日本生命で営業本部機構・人事分野の仕事を経験。その後、マッキンゼーで大企業の経営・戦略分野のコンサルティングを、マーサーで大企業の組織・人事分野のコンサルティングの仕事を経験。一般社団法人はなそう基金を設立し、国際交流促進による東日本大震災復興支援を継続中。