『生きる事は闘い。なら、どうする。』(菱木 貞夫 著)
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■会社という舞台ではいまの役を精一杯演じ切ることが大切
日本は豊かになり、成熟し、以前よりも機会の平等が保証される国になった。努力次第でどんな職業にも就くことができるし、世界への扉も大きく開かれている。ほんのちょっとの勇気を振り絞ってリングに立てば、人生の景色は変わる。本書では、若くして起業し、多くの苦難に直面しつつも克服してきた著者が、ビジネスの具体的な考え方・進め方と人生の根源的な歩み方について、自身の経験をもとに語っている。
会社は、それぞれに役が割り振られている舞台だ。求めた役ではないからと不平不満を述べるような人は役者の世界にはいないはずだが、ビジネスの世界にはいる。不平不満は大きな間違いだ。いま現在の舞台で求められている役を演じ切り、存在感を示すことでしか、次の段階に進めない。演じ切る者にのみ、さらに大きな役が回ってくるのだ。また、舞台の上では脇役でも、自分の人生の主役は自分自身。それをどうプロデュースするかは自らにかかっている。 -
■未知の仕事との出合いにこそ成長へのヒントがある
仕事の難しさは「正解が一つではない」ところにある。例えば新製品の販売目標を立てた場合には、その達成が正解となるだろう。しかし、数字で判断できない部分も仕事には多々ある。ある介護施設の理事長から、「フローリングの床が傷んでいるので、どうにかしたい」と相談があったときのこと。社員に現場を見に行かせると、「しっかり直すなら内装屋を使ったほうがいいと思ったので断った」と言う。しかし、フローリングをきれいに直したいなら、最初からそういう業者を探すはずだ。改めて理事長に確認すると、著者の会社には革のヒビ割れを目立たなく仕上げる製品があり、そんなイメージを持っていたことがわかった。そこで仕事を請け負って見た目をきれいにしたところ、感謝されたのである。
未知の課題と直面したときには、まずは相手の立場になって考え、自分たちが持っている技術で解決できないかを考えるべき。何が正解かではなく、どうすれば喜んでもらえるか。未知の分野でも、精一杯の努力をすることが肝心なのだ。 -
◎著者プロフィール
株式会社染めQテクノロジィ代表取締役。1942年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。72年、自動車用塗料メーカー起業。以降、不動産業、レストラン業、輸出入業に進出。2002年、アメリカ・ネバダ州の研究所でナノテクノロジー「染めQ」の開発に成功し、株式会社染めQテクノロジィ設立。ナノ技術をベースに、廃棄物抑制、エネルギーセーブ、社会インフラの長寿命化など、社会的諸問題の解決にチャレンジを続けている。