『世界で最もクリエイティブな国 デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方』(クリスチャン・ステーディル/ リーネ・タンゴー 著)
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■北欧の小国の競争力の源泉であるクリエイティビティの本質に迫る
北欧の人口560万人ほどの小国デンマークは、天然資源にも恵まれていないにも関わらず、「クリエイティビティ」を武器に高い国際競争力を獲得している。玩具メーカーLEGO、“世界最高レストラン”認定を受けたノーマなど、アイディアあふれる企業が、デンマークには多数存在している。本書は、同国の企業や組織、個人がクリエイティビティを発揮する秘訣を、多数のインタビューをもとに探っている。
本書の二人の著者は、クリエイティビティを「既存の枠にとらわれないこと」ではなく、「既存の枠の限界ぎりぎりの場所で考えること」とする。枠の限界に立って、その限界をさらに押し広げる。「枠の限界」には、新旧や異質な物事との間の境界がある。枠の外には出ずに、その境界にあるものを取り入れる。枠から外れてしまうと、多くの人に受け入れられなくなる可能性が高い。また、枠を広げるためには、枠の中にあるものを熟知しておくことが大事だ。 -
■開放的で協力的、自律的な社会の存在がクリエイティビティの背景に
コペンハーゲンのレストラン、ノーマが提供する、アイデアあふれる創作料理は、それがどんなに斬新なものであっても、「北欧料理」というコンテクストから外れることはない。制約がポジティブに働いているのだ。
ノーマには「サタデー・セッション」という行事がある。同店の料理人によるチームが好きな材料を使って自由に料理を試作。それを毎週土曜に料理長や副料理長が試食する。その中から新メニューに加えられる着想が得られる。料理人のクリエイティビティを喚起することにもなる。
専門化・分業化した組織よりも、チームをベースにした組織の方がクリエイティビティを発揮しやすい。イノベーション研究家のクリス・ビルトンは、集団のリーダーは合意を否定し多様性を確保するべきと主張する。デンマークには、権力が分散した、開放的で協力的、しかも自律的な社会がある。企業においても、戦略の策定に従業員を参加させることが伝統になっている。 -
◎著者プロフィール
クリスチャン・ステーディル:スポーツ衣料メーカーhummel(ヒュンメル)のオーナーで、海運、テクノロジー、食品、不動産などの事業を所有するトアニコグループのCEO。グローバルな事業展開と、デザインやイノベーション志向の経営で注目されている。
リーネ・タンゴー:オールボー大学の心理学教授で、同大の「クリエイティビティに関する文化心理学国際センター」共同ディレクター。職場におけるクリエイティビティやイノベーションについての著書があり、雑誌寄稿や講演活動も行っている。