『東北のすごい生産者に会いに行く』(奥田 政行/三好かやの 著)

『東北のすごい生産者に会いに行く』

『東北のすごい生産者に会いに行く』(奥田 政行/三好かやの 著) 

著 者:奥田 政行/三好かやの
出版社:柴田書店
発 行:2015/02
定 価:1,800円(税別)


【目 次】
1.セリの仕返し、鴨の恩返し
2.福島の未来を創る野菜たち
3.不屈の海
4.吟壌の桃
5.奇跡のワカメの故郷
6.変わる仙台、変わらぬ白菜
7.津波に消えた集落、消えぬ焼きハゼ
8.土へのあがない
9.よみがえる田んぼ
10.ゆうきの里の人々
11.南相馬の油菜ちゃん
[座談会]東北の「食」と「農」を語ろう

  • ■料理人とライターが復興と改革、地域づくりに取り組む11人を訪ね歩く

     東日本大震災から4年。甚大な被害を受けた東北の農業・漁業は、着実に復興への歩みを進めているようだ。本書は、東北の農業・漁業の復興と改革、地域再生の取り組みを進める地域の11人の生産者を、山形県鶴岡市のイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフと仙台出身のライター三好かやのさんが訪ねたルポルタージュ。奥田シェフは地元の食材を使いその場で料理。その写真やレシピも掲載されている。
     福島県郡山市で若手農家たちとともに「郡山ブランド野菜」の開発に取り組むのは鈴木光一さん。全国で「ご当地野菜」ブームが広まっているが、郡山には、いわゆる伝統野菜と呼ばれるものがなかった。そこで鈴木さんらは、地域の人の好みに合うようなオリジナルな品種をつくり出すことに。2003年から1年に1品目を目標に取り組み、震災前には七つのブランド野菜が登場していた。ところがその取り組みも震災と原発事故により中断を余儀なくされた。

  • ■郡山に、福島の食を応援するレストラン「福ケッチァーノ」がオープン

     原発事故により降り注いだ放射性物質は今も土中に存在する。しかし、郡山で採れる農産物からはほとんど検出されない。もともと同地には、セシウムを吸着して放さない粘土質の土壌が多かった。セシウムはカリウムによく似ているので、作物が間違えて吸ってしまうことがある。しかし、粘土質の土壌で、しっかりとバランスのとれた土づくりが行われていれば、吸うことはないという。鈴木さんは「自然の力と先祖の土づくりが良いかたちで繋がった」と話す。
     鈴木さんらがつくる郡山の野菜の美味しさと“力”を感じた奥田シェフは、「復興の切り札」になると確信。講師を務める郡山の調理師学校の教え子らをスタッフにして、現地に新しいレストランを開くことに。そうして2013年3月、郡山市の中心部にオープンしたのが、福島の食を応援するレストラン「福ケッチァーノ」だ。同店を中心に、生産者と料理人、そしてそれを味わう人たちの新しい繋がりが生まれている。

  • ◎著者プロフィール

    奥田政行:料理人、「アル・ケッチァーノ」店主。1969年山形県鶴岡市生まれ。2000年、鶴岡にイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」を開業。地元食材の持ち味を引き出す独自のスタイルで人気を博す。07年「イル・ケッチァーノ」、09年東京・銀座に「ヤマガタサンダンデロ」をオープン。
    三好かやの:ライター。1965年宮城県生まれ。食材の世界を中心に、全国を旅するかーちゃんライター。共著に『私、農家になりました』(誠文堂新光社)。