『シニアが拓く未来』‐延ばそう健康寿命 いつまでも社会とのつながりを!(一般財団法人人材支援機構 代表理事 竹川 勝雄 監修)
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■ボランティアにふさわしい特性を備える高齢者
男女とも平均年齢が80歳を超え、「人生90年時代」の幕開けを迎えているが、高齢者の多くは健康に恵まれている。生きがいのある充実した日々を過ごすためには、地域社会に貢献できるボランティア活動に従事するのが最適ではないだろうか。本書は、ボランティアをしたいが、きっかけをつかめない人たちのためのガイドブック的な一冊である。
高齢者はボランティアにふさわしい特性を備えている。就業時に培った知識や技能を役立てられる領域が社会に多くあるだけでなく、社会内での競争を卒業した存在なので自己利益の追求からも自由であり、「偽善」との疑いの目で見られることなく、純粋に生きがいを求めるものとしての活動ができるからだ。
ボランティアを志向する高齢者は臆することなく活動に参加すべきだ。
「なんのために?」と問われたら、「自分の生きがいのために」と胸を張ればよい。活動を健全な状態に保つためには、自分の行動の意味を振り返ることが肝要だ。 -
■社会と自身に活力を与えるシニアのボランティア活動
高齢社会の医療費や介護費の高騰は「老人の増加」に原因があるのではなく、「何もしようとしない老人」の増加に、主たる原因がある。熟年の活力維持の源泉は「活動」にあり、活動するからこそ元気なのである。
昨今の社会教育は、生涯学習という名の「楽習」のみを追いかける趣味とお稽古ごとばかりで、真の生きがいにはつながりにくい。それでは税金の投資が「非効率的」であるばかりか、社会の活力も、本人自身の活力も喪失させてしまう。国も自治体も各種のボランティア促進法/支援法を整備し、熟年の社会的活躍の機会を保障すべきで、それが定年後の健康と生きがいの鍵であり、国家の社会保障制度が回り続ける原理となる。
高齢社会における地域防衛は、熟年の活力を維持できるか否かにかかっている。熟年が元気な地域は、医療費の負担が減り、介護を先に延ばし、彼らの元気な社会貢献活動を通して地域の世代間交流と活力を支えることができるのである。 -
◎監修者プロフィール
一般財団法人人材支援機構 代表理事。放送大学、北海道大学大学院、各非常勤講師。慶應義塾大学商学部商学科卒業、立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科博士後期課程修了、博士(技術経営)。銀行員、企業役員、恵庭リサーチ・ビジネスパーク(株)代表取締役社長を経て、現職。著書に『破綻する組織永続する組織』(中央経済社)、『生かされている私たち』(美巧社)など。