『アクション・バイアス』 (ハイケ・ブルック/スマントラ・ゴシャール 著)
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■現場の個々のマネジャーが「意志の力」を発揮するための方策を探る
企業の現場で働くマネジャーの多くは、目の前にある日々の業務に追われ、本当にするべきことができていない。本書では、組織にとって真に重要な仕事をするには、目的意識を伴う行動によって物事を達成しようという姿勢、すなわち「意志の力」が必要だとする。そして個々のマネジャーが「意志の力」を発揮し、組織の推進力を得るための具体的な方策を探っている。
著者は、マネジャーの行動を「エネルギー」「集中」という二つの要素をもとに4タイプに分類。エネルギッシュだが集中力に欠け、目前の課題を一心不乱に追うだけの「髪振り乱しタイプ」、エネルギーと集中力のどちらも足らず、失敗を恐れる「先延ばしタイプ」、集中して仕事をするが、気力に乏しい「超然タイプ」。そして理想的なエネルギッシュで集中力も高い「目的意識タイプ」だが、このタイプは全マネジャーの1割ほどしかいないという。このタイプは、どんなに混乱した状況でも冷静沈着に行動する。 -
■思考と感情が重なり合う策を探り出し、必要に応じ目標自体を修正
著者は、マネジャーが「意志の力」を活性化し、それを発揮するために、目標に対する「思考」と「感情」を一致させるのがよいとする。いくら目標に対して前向きに考えたとしても、感情的に反発を覚えては、エネルギーも集中力も湧きようがない。目標についての思考と感情が重なり合う解決策を探し出し、必要があれば目標自体を修正することだ。
マネジャーに「意志の力」を発揮させる具体的な戦略としては、「竜退治」「王女獲得」と呼ばれる方法がある。「竜退治」では、組織に襲いかかるであろう脅威を「竜」として示し、それを退治することに注意と意欲を集中させる。その脅威とは、経営危機であったり、強力な競争相手、自社の製品やサービスを陳腐にする破壊的技術であったりする。「王女獲得」は、将来に向けたチャンスを示すことで前向きなエネルギーを湧き起こす戦略。明確で実現可能に見える将来ビジョン、新商品、新しい市場の可能性などが「王女」にあたる。 -
◎著者プロフィール
ハイケ・ブルック:ザンクト・ガレン大学(スイス)教授。同校「リーダーシップと人的資源管理」研究所所長。ベルリン自由大学より経営学修士号を、ハノーバー大学より経営学博士号を取得。専門はリーダーシップ論。
スマントラ・ゴシャール:1948年インド生まれ。マサチューセッツ工科大学とハーバード大学より経営学博士号を取得。組織戦略論の世界的権威で、インシアード経営大学院教授、ロンドン・ビジネススクール教授、インド経営大学院初代学長、イギリスの先端経営研究所フェローなどを歴任。2004年に逝去。