『ハーバードはなぜ仕事術を教えないのか』(佐藤 智恵 著)
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■ハーバードで教えられる、リーダーの思考、行動、習慣を120項目で紹介
プレゼン技法、統計分析、資料作成法など、いわゆる「仕事術」を指南するビジネス書は多数出版されている。キャリアアップをしたいとき、仕事に行き詰まっているとき、多くのビジネスパーソンは、こうしたスキルアップに注力しがちだ。しかし、世界最高レベルのビジネス教育を行っているハーバードビジネススクールでは、こうした仕事術は一切教えないという。そのかわりに叩き込まれるのがリーダーとしての思考や行動様式だ。本書では、教授陣への取材や授業内容、著書・論文などをもとに、ハーバードで教えられる一流のリーダーの考え方や習慣、行動を120の項目にまとめている。
ハーバードで育成されるリーダーは「お金」のために働かない。お金を稼ぐには長期間、継続的に働くのがもっとも確実だ。しかし、人間はお金だけを目標に何十年も働くことはできない。それよりも人に役立つ、社会に貢献する、あるいは自分が本当に好きな仕事をした方がいい。 -
■一流のリーダーは「ラーニング」と「アンラーニング」を繰り返す
優れたリーダーは「アンラーニング」の達人だという。アンラーニングとは、学んだことを捨てること。「リーダーシップを学ぶことは、ラーニング(学習)とアンラーニングのプロセスの繰り返し」と、ハーバードビジネススクールのリンダ・ヒル教授は言う。だが、アンラーニング、すなわち自分のこれまでの考え方や習慣を“捨てる”ことは、普通の人にとってはなかなか難しい。
たとえば、管理職になったときには、これまでの一般職の考え方をアンラーニングしなければならない。また、そのとき社内の権力闘争に巻き込まれたとする。そんなときには「社内政治は無駄なこと」という偏見をアンラーニングする。そして「社内政治も管理職の仕事」とラーニングするのだ。
完璧主義を手放すことも重要だ。ハーバードでは「完璧ではなく、最善を目指せ」と教えられるという。80点を100点に近づけようとしている間に、80点を2回取る人に負けてしまうからだ。 -
◎著者プロフィール
作家/コンサルタント。1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。2001年米コロンビア大学経営大学院卒業(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局を経て、2012年に独立。『世界最高MBAの授業』(東洋経済新報社)、『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)など著書多数。2004年よりコロンビア大学経営大学院の面接官。近年はテレビのコメンテーターも務めている。