『残念な人の仕事の中身』 (ロバート・W・ゴールドファーブ 著)
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■なぜ有能なのに上司や経営陣から評価されないのか
たいていの会社には、きわめて有能で目に見える数字で業績を上げているにもかかわらず、上司や経営陣から評価されないために昇進に無縁だったり、希望する仕事が与えられない社員がいるのではないだろうか。ひどい場合には解雇の対象になったりもする。本書では、そういった「残念な人」になってしまう人の、どういうところに原因があるかを分析。彼らに共通する特徴を挙げるとともに、具体的なケーススタディに対応した改善方法、上司を味方につける行動等を提案している。各ケースでは、その状況を本人と上司がそれぞれどう見ているか、立場によって異なる視点を提示し、問題点を鮮明にしている。
評価されない人の性格や行動について著者が挙げるのは「一貫性の欠如」「役割の無理解」「ジコチュー」「傲慢」「頑固」「理論至上主義」「偏見」「変化への抵抗」「仲良しクラブ」「まかせない」「問題の誇張」「無用なユーモア」の12の特徴である。 -
■周囲の人の感情を尊重できる「人間性」が重要
たとえば「人の意見をすぐに否定する」というケース。主人公のローラは33歳の教科書出版社マーケティング部門の最年長者である。本人は、部下に服装や時間厳守、私語などについて厳しく注意し、育てていると思っている。しかし、その上司から見ると彼女は「新しいアイデアを生み育てるリーダーというより厳格な規律委員のよう」と、その部下の対応に不満を持っている。とりわけ問題なのは、部下が出す新しいアイデアを彼女がいつも否定する、という点だ。それに対して著者は、最低限のルールを浸透させたうえで、「おさえつけない」「意図をくみとる」などの改善アドバイスを送っている。
本書に掲載されたケースのほぼすべてが「人間性」の問題。著者が最も強調したいのは、周囲の人の感情を尊重し、対人関係に慎重になることの大切さなのだろう。 -
◎著者プロフィール
世界的コンサルティングファーム「アーバンディレクションズ」代表。コロンビア大学卒業、ニューヨーク大学修士。世界の5大陸において、製造業から教育機関、政府機関まで60以上の組織で800人以上のリーダーやマネジャーを対象にコンサルティングやコーチングを行っている。また、『ニューヨークタイムズ』『ウォールストリートジャーナル』などに、マネジメントに関する論説を寄稿している。