『ニュータイプス』 (鈴木J.貴博 著)
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■もはや「他社を動かすスキル」がなければ優秀な人材とはいえない
世界的なビジネス環境が垂直統合型から水平分業型に変化している今、企業に必要な「優秀な人材」の定義も変わってきた。事業が垂直統合型から水平分業型に移行するということは、必然的に自社だけではビジネスが成立しなくなることを意味する。言い換えれば、「他社を動かすスキル」が高くなければ、仕事にならないということだ。しかし、この「他社を動かすスキル」が、これまでの日本型ビジネスマンには圧倒的に足りない。部下を動かせる人材は、これまでは優秀な人材だとされ、企業内に大勢いた。ところが今は「他社」を動かせる人材でなければ優秀とはいえない時代となった。そして、このスキルを持った人材はまだわずかしかいないという現状がある。
本書では、この新しいスキルを備えたビジネスパーソンを「ニュータイプ」と呼び、10人の具体的ケースをもとに、7種のビジネス・スキルについてその特徴を論じている。 -
■オールドタイプとニュータイプの違い
ニュータイプのビジネスパーソンは、他社の社員の能力を非常によく把握している。どのようにして把握するのか。もっとも簡単で重要なのは、頻繁に相手を訪問したり、飲みに誘ったりすることだ。しかし飲み会の位置付けがオールドタイプのビジネスパーソンとは異なる。オールドタイプは、相手との絆を深める懇親の場として飲み会を捉えがちだが、ニュータイプは、相手を観察する場として飲み会を活用するのである。
もうひとつの強力な手段は、リファレンスをとることだ。たとえば著者の知人は、著者との打ち合わせの終わりに、毎回必ず「ところで」と話題を変え、共通の知人についての話題を振ってくる。「あの人どう思う?」とか「あの人にこういうことをやってもらうとできるかな」など。このように他人のリファレンスを一日に何回となく、人と会うたびに収集することで、他社の戦力が浮き彫りになってくる。他社に仕事を任せる時代には、他社の戦力を把握する技術と習慣がモノをいうようになるのである。 -
◎著者プロフィール
大手企業向けの人材育成トレーナー。アクティブリスニングの能力に優れ、インタビューを通じて相手が気づいていない真実を引き出す力を持ち合わせている。その力を通じた人材育成プログラムを大企業クライアントに対して提供する。同時に、鈴木貴博名義で百年コンサルティング株式会社の代表として事業戦略コンサルティングも行う。