『世界とつながるビジネス』 ‐BOP市場を開拓する5つの方法

『世界とつながるビジネス』 ‐BOP市場を開拓する5つの方法

『世界とつながるビジネス』 ‐BOP市場を開拓する5つの方法 

編著者:国連開発計画
出版社:英治出版
発行:2010/11
定価:2,100円


【目次】
 1.すべての人に価値をもたらす
   ――利益と幸福を生むビジネスチャンス
 2.BOP市場開拓の5つの戦略
 3.ケーススタディ――インクルーシブビジネス実例集

  • ■貧困層と企業をつなぎ双方が利益を得る「インクルーシブビジネス」

     世界の人口の約3分の2は、1日8ドル未満で暮らす貧困層が占めているといわれる。彼らの生活向上は世界が直面する課題の一つではあるが、一方で未開拓の巨大な市場が眠っているという見方もできる。国連開発計画(UNDP)は、2006年から「包括的な市場育成イニシアチブ(GIM)」という事業を始めている。これは、貧困層への援助とともに、市場開拓による世界経済の活性化を目的としたものだ。本書は、GIMの考え方や現状分析、具体的な戦略等をまとめたもの。
     GIMが推進する、貧困層と企業をつなぐビジネスを、「貧困層包括的(インクルーシブ)ビジネス」、略して「インクルーシブビジネス」と呼ぶ。需要面では貧困層のニーズや購買力に合わせた商品やサービスを提供すること、供給面では、貧困層から、従業員を雇用、原材料を調達、零細商店主などに販売を委託することなどがその方法となる。

  • ■複雑に絡み合う多くの制約要因をクリアするための五つの戦略

     インクルーシブビジネスを成功させ、貧困層と企業、双方が利益を得るためには、大きく分けて5種の制約要因をクリアしなければならない。すなわち(1)市場情報の不足、(2)規制環境の不備、(3)物的インフラの未整備、(4)知識やスキルの不足、(5)金融サービスの不足。実際に成功しているインクルーシブビジネスは、以下の戦略のうちいずれか一つ、または複数を使って、制約を取り除いたり、折り合いをつけることができている。その戦略とは「製品やビジネスプロセスを貧困層のニーズや環境に適応させる」「市場の制約を取り除くために投資する(貧困層を訓練したり情報提供を行う、製品やサービスと金融サービスを組み合わせる、など)」「貧困層の強みを活かす(商品やサービスを貧困層と共同開発する、など)」「他のアクター(政府の普及組織、NGOなど)の能力や資源を組み合わせる」「政府と政策対話を行う」の五つである。

  • ◎著者プロフィール

    国連システムのグローバルな開発機関。本部はニューヨークにあり、「貧困削減とミレニアム開発目標の達成」、「民主的ガバナンス」、「危機予防と復興」、「環境と持続可能な開発」の4つの重点分野において、人々がよりよい生活を築けるよう、各国が知識・経験・資金にアクセスできるよう支援を行っている。世界135 カ国に常駐事務所を設置し、他の国連機関や政府、NGO 等と協力しながら166 の国や地域で年間6000 件以上のプロジェクトを実施している。