『こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?』 (森田 英一 著)
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■日本企業に共通する「とらわれ」の罠
日本の会社員は、非常にまじめであり、優秀で責任感が強い。周りの空気を読む力に優れており、コツコツと働く人が多い。その特性が戦後日本の経済成長をもたらし、今の日本の礎を築いてきた。だが、その同じ特性が今、日本の会社の進化を阻んでいる。まじめにコツコツ一生懸命やっているのに、多くの社員が閉塞感を感じ、中長期的には会社を沈める方向に進んでしまっている。
この状況を打破するには、自分たちが陥っている悪循環をありのままに見る必要がある。今まで当たり前だと思っていた常識が、これからの時代では常識ではないかもしれない。つまり、自分たちがとらわれていることが限界を生んでいるということに気づく必要がある。本来持っている違和感を感じとる力や直感を活かして様々な「とらわれ」に気づいたとき初めて私たちは本当の問題を発見し、組織風土を変え、ひいては人や組織をよりよく進化させていくための第一歩を踏み出すことができる。 -
■全体を俯瞰することで悪循環から抜け出す
私たちの周りでは小さな問題が複雑に絡まり合って、全体として大きな問題が生み出される構造になっている。それぞれが自分なりによかれと思って目の前のことを一生懸命やっていても全体から見ると悪循環のサイクルを生んでしまうことがある。だからこそ、私たちは「個々の問題をどうしたらよいか」と考える思考のレベルから一つ次元を上げて、「いま起こっていることの全体を俯瞰する」視点が必要になる。
組織の悪循環は、みんなが何かにとらわれているときに発生する。自分の見方は一部分、一側面しか捉えていないのではないかと疑いを持ち、誰かが感じているちょっとした違和感に耳を傾けることで、違う側面に気づき視野が広がり、一気に全体の構造を俯瞰することができるようになる。
そして、全体を俯瞰しその関係性の中で、自分も問題に加担しているかもしれないという見方をすることが本質的問題を解決するための第一歩となる。 -
◎著者プロフィール
大阪大学大学院基礎工学研究科卒業後、経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)のチェンジマネジメントグループにて、人と組織のコンサルティングに従事。2010年10月、イマココミライ社を創立し、次世代の教育モデル創造、地域活性化とグローバル化の両立、人と人とのつながりや働き方の次世代モデル創造などをテーマに各種プロジェクトを行っている。また、国立大学法人高知大学客員教授、株式会社ジョブウェブ取締役も務める。