『マネジャーの実像』 (ヘンリー・ミンツバーグ 著)

『マネジャーの実像』  ‐「管理職」はなぜ仕事に追われているのか

『マネジャーの実像』 (ヘンリー・ミンツバーグ 著) 

著者:ヘンリー・ミンツバーグ
出版社:日経BP社
発行:2011/01
定価:2,940円


【目次】
 1.マネジメントがいちばん大事
 2.マネジメントのダイナミクス
 3.マネジメントのモデル
 4.マネジメントの知られざる多様性
 5.マネジメントのジレンマ
 6.有効なマネジメント

  • ■マネジャーはリーダーでもあり、リーダーはマネジャーでもあるべき

     組織において部下をもつ人のことを「リーダー」と言ったり、「マネジャー」と呼んだりする。この2つは混同されて使われることも多いが、リーダーは長期的目標に向かって高所から皆を引っ張り、変革を率先して行う。マネジャーはもっと現場に近い立場で短期的目標の実現に向けて実務で皆を支える、といった違いが一般的には認識されている。本書では後者のマネジャーに着目し、さまざまなタイプの29人のマネジャーの日々を観察し話を聞くことにより「マネジャーはどうあるべきか」を論じている。
     本書では、リーダーを「正しいことをする人間」、マネジャーを「ものごとを正しくおこなう人間」としながらも、「マネジャーはリーダーでもあり、リーダーはマネジャーでもあるべき」とし、リーダーシップとマネジメントの一体化を主張。リーダーとして高い台座に鎮座させると、人々が協調するためのコミュニティ意識が薄まるのだという。

  • ■情報、人間、行動の3つの次元すべてで役割を果たし活動する

     マネジメントは、アート(芸術)、クラフト(技)、サイエンス(科学)の3要素がそれぞれ頂点となる三角形の中でおこなわれる。アートは、直感を通じた洞察やビジョンを生み出し、マネジメントに理念と一貫性を与える。クラフトは、経験を通じて学びを可能にし、マネジメントを地に足のついたものにする。そして、サイエンスは知識の体系的な分析を通じてマネジメントに秩序をもたらす。3要素のバランスが肝要なのだ。
     また、マネジメントは3つの次元でおこなわれる。現場業務から遠い順に「情報」「人間」「行動」の次元だ。マネジャーには、いずれの次元でも組織の外と内に対する2種類の役割がある。たとえば情報の次元では、周囲の外部世界全体とコミュニケーションを取ることと、情報を通じて組織内をコントロールすることだ。マネジャーに求められるのは、この3つの次元すべてで偏りなく役割を果たし、活動ができることなのだ。

  • ◎著者プロフィール

    カナダ・マギル大学教授。研究分野はマネジメントのあり方と組織形態、戦略策定プロセスといったマネジメント全般と組織論。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院で博士号を取得した後、マギル大学で機械工学の学位を取得。2000年に米国経営学会から優秀研究者に選ばれる。今最も影響力のある経営学者の一人とされている。著書に『マネジャーの仕事』(白桃書房)、『MBAが会社を滅ぼす』(日経BP社)等。