『インサイド・アップル』(アダム・ラシンスキー 著)
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■ベールに包まれていた企業組織の「中身」を明らかに
いま世界でもっとも成功している企業として、多くの人は「アップル」の名前を挙げるだろう。創立者の一人で"カリスマ"とも称された前CEO・スティーブ・ジョブズが2011年10月に他界して新体制が定着した現在もアップルの勢いは衰えることはない。しかし、ジョブズの発言やエピソード、能力や性格については世界中の人々に知れ渡っているのだが、経営組織としてのアップルがどのような構造になっているかは多くの部分でベールに包まれていた。社員にすらその全体像を把握させない、その独特な秘密主義のゆえからである。本書は、そのベールに包まれたアップルの社内システム、経営理念、人事等について、元幹部・社員十数人の証言をもとに、初めて明らかにしている。
アップルの文化で特筆すべき特徴は、「いかにして最大の利益をあげるか」ということではない、という点。アップルの目標は「本当にすばらしい製品を作ること」なのだ。 -
■プロフェッショナルによる「縦割り」の組織構造
アップルでは「デザインが製品の出発点」という考えが浸透している。たいていの会社は計画を立て、マーケティングやポジショニングを終えたあとで、それをデザイナーに渡す。しかし、アップルでは逆で、社内のあらゆる部門はデザイナーのビジョンに従う。また、アップルの製品開発では「ノー」と言うことが重要になる。素晴らしいアイデアにもあえて「ノー」ということで、アップルの「シンプルさ」が守られる。
アップルの秘密主義は社員同士でも徹底している。チーム同士は切り離され、社員は自身の仕事に集中させられる。横の連絡がないため、社内政治に気を患わされることもない。そして社員は常に仕事に没頭し、帰宅しても仕事のことを忘れないほどになる。「縦割り」は幹部にも適用される。幹部にはそれぞれ専門の役割が与えられ、たとえばデザイン担当の最高幹部は財務について何も知らなくても許されるのである。 -
◎著者プロフィール
「フォーチュン」誌シニアエディター。イリノイ大学で歴史学および政治学の学位を取得。テクノロジー・金融を専門として活躍し、シリコンバレーとウォール街をフィールドとするトップジャーナリストの一人として知られている。「フォーチュン」誌では、アップルの他、グーグルやHPに関する特集記事を多数執筆している。2011年5月のスクープ記事「INSIDE APPLE」は大きな反響を呼び、本書も世界的ベストセラーとなっている。