『O2O 新・消費革命』 (松浦 由美子 著)
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■ネット(オンライン)とリアル(オフライン)の連携
長引く不況、モノが売れない時代の中、リアル店舗にとって、まさに苦境を脱出する糸口となるような新しいビジネスが、今、誕生している。それが「O2O(オー・ツー・オー)」(Online to Offline)である。「O2O」とは、ネット(オンライン)の力を駆使して、現実社会(オフライン)のリアル店舗へ消費者を呼び込み、商品・サービスの利用を促進しようというものだ。
背景には、iPhone、Android端末などのスマートフォンの急速な普及、Facebook、Twitterなどに代表されるソーシャルメディアの利用者の拡大がある。常時ネットにつながった消費者は、いつでもどこでも必要な情報をネットから得ることができる。新しい消費者の台頭をいち早く敏感に察知した企業はスマートフォンを基点にしたサービスやその特性を生かしたサービスを次々に生み出した。拡大を続けるネット企業と店舗を持つリアル企業とが連携し合うO2Oの世界、そこでは、今までの商習慣の常識では考えられないような新しい消費世界が生まれつつある。 -
■「ビッグデータ」がO2Oの世界をさらに進化させる
O2Oビジネスの今後を語るときに重要になってくるのが、「超巨大データ」すなわち「ビッグデータ」をいかに手に入れ、活用できるかであると著者は語る。「ビッグデータ」は、2011年以降、IT業界における重要なキーワードである。多種多様な大規模データを収集・分析して自社の商品・サービスの向上に生かし、顧客満足度をあげ、さらに、自社の競争力の強化にもつなげ、最終的に利益につなげていくための取り組みがネット企業にもリアル企業にも求められている。
O2Oビジネスは、新時代の消費革命の始まりである。ソフトバンクの孫社長は「O2Oは業界の新しいキーワードだ」と表明し、セブン&アイHDの鈴木会長は「ネットを制するものはリアルを制す」と言い切った。この潮流は決して一過性のものではなく、今後さらに拡大されることは間違いない。農業革命、産業革命が人々の生活を一変させたように、情報革命が消費者の生活を根本的に変えていくだろう。 -
◎著者プロフィール
ITアナリスト。大学卒業後、米国留学を機にITの世界に目ざめる。帰国後、ITエンジニアとして半導体ウェハ検査装置の開発や原子力・ETCなどのインフラ制御系システムの開発、大手印刷会社のIT技術センター部門でセキュリティ関連のサービスや画像情報データベース、地図情報サービスなどのWeb開発に携わる。現在は、インターネット企業に勤務の傍ら執筆活動も行う。「ITからリアル世界への翻訳者」として、テクニカルな話題を一般読者にわかりやすく解説することをモットーに活動中。