『ブランドのそだてかた』 (中川 淳/西澤 明洋 著)
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■ブランドをそだてることは、企業をそだてること
ブランドとデザイン、一昔前にはそれほど重要視されなかったこれらのキーワードは、今では誰もが企業経営において必要不可欠なものだと考えるようになった。ブランドというものはつくって終わりではなくそこからスタートするものであり、ブランディングとはむしろ、つくった後のそだてていく過程こそが重要なのだ。
本書では、市場も扱う商品も会社規模も異なる6つの企業の経営者にインタビューし、経営者、デザイナー双方の視点からブランドを育み成功させたポイントを「21のしくみ」として解き明かしている。
日本経済は長引く不況の中で回復の兆しが見えない状況が続いているが、そんな中、単に売り上げを上げるためのヒット商品を狙うのではなく、会社全体としてのブランド力を向上させていく方法を考えることが、これからの企業経営に求められる姿である。ブランドをそだてることはすなわち、企業をそだて、人をそだてることである。 -
■ブランドをそだてるしくみや工夫
キラリと光るブランドを比較的短期間に確立した6社の経営者に対しインタビューを行い、そこで浮かび上がった「ブランドをそだてる」ための21のしくみは、「企画開発」「デザイン」「モノ作り」「人材」「経営」の5つのポイントに集約できる。
まず、企画開発においては「自分たちらしいかが判断基準」「未活用の経営資源を生かす」「多層的に差別化する」などが、デザインについては「世界観を伝えるデザイン」「スタイルを売る」「経営者の目でデザインする」ことなどが挙げられている。さらに、モノ作りについては「製品は永久保証」「ユーザー視点を忘れない」「大量生産はしない」などが大切であり、人材に関しては「スキルより好きを大切にする」「人材を育てる組織を作る」「社員の勤勉がブランドを支える」ことなどに注目している。
最後に5つめのポイント、経営については「事業ドメイン、ポジショニングで差別化する」「会社の成長=社員の成長にこだわる」「人ありきで事業を考える」とまとめている。 -
◎著者プロフィール
中川 淳:中川政七商店代表取締役社長。「粋更kisara」「中川政七商店」などのブランドで直営店出店を加速させ、伝統工芸をベースにしたSPAという他に類を見ない業態を確立。「奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。」(日経BP社)などの著書がある。
西澤 明洋:エイトブランディングデザイン代表。「ブランディングデザイン」という視点のもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発などを手掛け、幅広いジャンルでのデザイン活動を行っている。著書に「ブランドをデザインする!」(パイインターナショナル)などがある。