『商店街はなぜ滅びるのか』  ‐社会・政治・経済史から探る再生の道

『商店街はなぜ滅びるのか』  ‐社会・政治・経済史から探る再生の道

『商店街はなぜ滅びるのか』  ‐社会・政治・経済史から探る再生の道 

著者:新 雅史
出版社:光文社
発行:2012/05
定価:777円


【目次】
 1.「両翼の安定」と商店街
 2.商店街の胎動期(1920~1945)
 3.商店街の安定期(1946~1973)
 4.商店街の崩壊期(1974~)
 5.「両翼の安定」を超えて

  • ■都市化と流動化に対する方策として「発明」された商店街

     「シャッター通り」という言葉がある。店舗はあるのだが、シャッターを下ろしたままで開店している様子のない廃墟のような商店街のことで、近年、多くの地方都市でしばしば目にする風景である。こうした商店街の衰退の要因は、よく言われるように「郊外型ショッピングセンター・ショッピングモールの相次ぐ出店」と「コンビニエンスストアの急速な普及」だけなのだろうか。本書では、そもそも商店街は決して伝統的に存在していたものではなく、20世紀以降の近代日本社会の秩序形成の過程、すなわち農村部から都市部へと流れ出る人々を中間層化して社会秩序に統合するという目的から「発明」された人工物であるという主張のもとに、商店街には、もともと衰退に向かう構造的な問題が内在していたことを浮き彫りにしている。加えて流通(小売店)の規制緩和要求というアメリカからの圧力、および内需刺激のための財政投融資が衰退に拍車をかけたと論じている。

  • ■生き残るための「コンビニ化戦略」がさらに商店街を衰退させる

     商店街が内在している構造的問題は、江戸期の商家と比較して柔軟性のなくなった「近代家族」による自営形態にある。現代の小売商は、子どもが跡を継がないと、そのまま店をたたむケースが少なくない。商店街は地域に開かれている存在であるはずなのに、それぞれの店舗は「家族」という枠の中に閉じられている。つまり日本の商店街は、家族という閉じられた枠の中で事業が営まれ、その結果、わずか1、2代しか存続できないような代物だったのだ。流通の規制緩和は、大型ショッピングセンターを乱立させ、それに対する生き残り戦略として零細小売商が模索したのがコンビニ化である。しかしこの戦略がさらに内側から商店街を崩壊させた。商店街は、専門店が一つの街区に並ぶことで「横の百貨店」としての機能を果たしていたが、コンビニという「万(よろず)屋」は明らかに商店街の理念とは異なる。こうして昭和前期に「発明」され、高度成長期に花開いた商店街は終焉を迎えたのである。

  • ◎著者プロフィール

    1973年福岡生まれ。東京大学人文社会系研究科博士課程(社会学)単位取得退学。現在、学習院大学非常勤講師。主著に「コンビニをめぐる〈個性化〉と〈均質化〉の論理」『ネットメディアと〈コミュニティ〉形成』(東京電機大学出版局)、「災害ボランティア活動の『成熟』とは何か」『大震災後の社会学』(遠藤薫編著、講談社現代新書)。本書が初の単著となる。