『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』 (出雲 充 著)

『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』  ‐東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』  (出雲 充 著) 

著者:出雲 充
出版社:ダイヤモンド社
発行:2012/12
定価:1,575円


【目次】
 1.問題と、自らの無知を知るということ
 2.出会いと、最初の一歩を踏み出すということ
 3.起業と、チャンスを逃さずに迷いを振り切るということ
 4.テクノロジーと、それを継承するということ
 5.試練と、伝える努力でそれを乗り越えるということ
 6.未来と、ハイブリッドであるということ

  • ■エネルギー、環境、食料問題を一挙に解決するミドリムシ

     エネルギーの枯渇、地球温暖化、食料・栄養不足といった人類の存亡に関わる問題を解決する手段として近年注目を集めつつあるのが「ミドリムシ(学名:ユーグレナ)」の活用だ。植物と動物の間の生き物であるミドリムシからは植物と動物両方の計59種もの栄養素を得ることができる。また体内に葉緑素を持ち、通常の植物よりもはるかに効率的に光合成を行うため、CO2削減に役立つ。さらに、光合成によって作り出した油を精製すれば、ロケットやジェット機を飛ばすことができるほどのバイオ燃料が得られる。本書は、そのように社会に大きなメリットをもたらすミドリムシの大量培養に世界で初めて成功し、事業化を果たしたバイオベンチャー・株式会社ユーグレナの創業者による「起業物語」である。起業の道のりを振り返ることにより、ミドリムシの有する大きな可能性と、それが受け入れられるために必要だったものの考え方と行動について語り尽くしている。

  • ■逆風が吹いた3年間で「感情的な共感」の大切さを学ぶ

     東大の学生時代、世界から栄養失調をなくす方法を考えていた著者は、サークルで知り合った同大学農学部の学生・鈴木健吾氏(現・ユーグレナ取締役・研究開発部長)から「ミドリムシ」の存在を知り、事業化を決意する。しかし他の微生物から狙われ汚染されやすいミドリムシは培養が難しく、それまでの研究は頓挫していた。著者たちは、それまでの研究者たちによる「無菌室等でミドリムシを守る」という対策から「ミドリムシ以外生きられない培養液をつくる」という方法に切り替えることにより大量培養に成功する。
     ユーグレナは、ライブドアから出資を受けていたために、同社の強制捜査後にバッシングを受けることになる。危機に陥った著者たちは必死の営業活動を展開し、伊藤忠商事からの出資によって救われる。その苦難の3年間で著者が学んだことは、新しいことをするためには「科学的な正しさ」と「感情的な共感」の両方が必要だということだった。

  • ◎著者プロフィール

    株式会社ユーグレナ代表取締役社長。東京大学農学部を卒業し、2002年東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。2005年8月、株式会社ユーグレナを設立。同年12月に世界初のミドリムシ大量培養に成功する。ユーグレナは食品や化粧品としてミドリムシを事業化、2012年12月に東証マザーズ上場を果たす。同年Japan Venture Awards「経済産業大臣賞」受賞、世界経済フォーラムが選出する「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出される。