『コピーキャット』 (オーデッド・シェンカー 著)
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■模倣から革新を生む「イモべーション」の戦略を探る
ビジネスの世界ではイノベーション(革新)が重要視され、イミテーション(模倣)にはマイナスのイメージがつきまとう。しかし現実には、多くの模倣者が成功を収めている。ウォルマート、IBM、アップル、P&Gといった著名な企業も、実は既存の技術やビジネスモデルの模倣を行っているのだ。本書では、こうしたイノベーターでもあり、イミテーターでもある企業を「イモベーター」と呼び、模倣を革新に結びつける「イモべーション」の戦略、ビジネスモデルをさまざまな事例をもとに解き明かしている。
イモベーターは、模倣したものを組み合わせたり、改良したりすることによってイノベーションを起こす。模倣した要素を、自身の環境や脈絡、状況に適応させ、そこに独創性を吹き込むのである。現代では、グローバル化、IT化により情報や知識の獲得が容易になっている。収集した情報や知識をいかに組み合わせるかが戦略のカギとなる。 -
■模倣するモデルの要素間の脈絡を単純化せずに捉えることが大切
米国で初めて成功したLCC(格安航空会社)のサウスウエスト航空は、先行するLCCのモデルを取り入れつつ、それらの会社の失敗の教訓を反映した新しいモデルを作り上げた。そして同社のビジネスモデルは、後発のLCCたちにさらに模倣されることになる。
成功する模倣の一形態に「ある環境から別の環境にモデルを移植すること」がある。例えばカナダのウエストジェット航空は、サウスウエスト方式を「カナダ化」した。また、ライアンエアーは、サウスウエスト・モデルの、安い価格で多くの人に座席を売るというアプローチに磨きをかけた。模倣元から必要な要素を選択し、発展させたのである。
イモべーションに成功するためには、単純化は禁物。模倣しようとするモデルの構造を複雑なまま捉え、要素同士の脈絡を捉えなければならない。そしてその構造を自らの環境や、関連性のある知識や情報と組み合わせることでイモべーションは完成するのである。 -
◎著者プロフィール
オハイオ州立大学フィッシャー・カレッジ教授。フォード・モーター社グローバル・ビジネス・マネジメント担当理事を兼務する。エルサレム・ヘブライ大学で東アジア研究と社会学の学位、コロンビア大学で博士号を取得。専門は国際経営・異文化マネジメントで、ケンブリッジ大学、バーミンガム大学、北京大学、対外経済貿易大学(北京)、IDC(イスラエル)、国際大学(日本)など世界各地の大学で教鞭をとる。