『統計学が最強の学問である』 ‐データ社会を生き抜くための武器と教養
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■あらゆる分野で決断、戦略、行動の最強の武器になる統計学
人が決断し行動するにあたって、もっとも速く最適な方法を選ぶには、データを収集し分析する、すなわち統計学を用いることがもっとも良い方法といえる。統計学は、どんな分野においても決断、戦略、行動の最強の武器になりうる。本書は、その「最強の武器」の使い方を、ビジネスや日常生活における身近な例を取り上げながら解説している。
自社の商品を買ってくれる人と買ってもらえない人の差異はどこにあるのか。それが明らかになれば、効力のあるマーケティング戦略を立てることができる。実際のビジネスにおいては、その差異を経験や勘に基づいて判断しているケースが多い。「経験や勘」は不正確だ。なぜなら人間には先入観や物事を都合よく解釈してしまう性質があるからだ。また、一つあるいは数例程度の偏った成功体験から汎用性に欠けた「ビジネスの成功法則」を見いだしてしまうこともある。統計学ならばこれらの欠陥を補うことができる。 -
■事象の本当の原因を探り当てるのに役立つ「ランダム化比較実験」
統計学を“最強”にするためには、いくつかのツールを使う必要があるが、もっとも基本的なのが「クロス集計」である。しかし、単にクロス集計をするだけでは正確な判断はできない。調査結果には「誤差」がつきものだからだ。誤差が起きる確率のことを「p値」といい、慣例的に「5%以下」であれば「この結果は偶然生じたものとは考えにくい」と判断される。p値が小さければ小さいほど、データは確かなものということができる。
ある事象の本当の原因を明らかにするために役立つ強力なツールとして、「ランダム化比較実験」がある。この方法論では、対象を「ランダム」に抽出していくつかの群に分け、それぞれの群ごとに異なる条件を与えて行動の結果などを比較する。ランダムに選ばれているので、結果が群によって違った場合、個々の対象がもともと持っている性質が原因だとは考えにくい。そのため、与えた「異なる条件」が本当の原因であると判断することができるのだ。 -
◎著者プロフィール
1981年生まれ。東京大学医学部卒(生物統計学専攻)。東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ハーバードがん研究センター客員研究員を経て、現在はデータに基づいて社会にイノベーションを起こすためのさまざまなプロジェクトにおいて、調査、分析、システム開発および戦略立案のコンサルティングに携わっている。