『ものづくりは、演歌だ。』 (包行 均 著)

『ものづくりは、演歌だ。』 ‐義理と人情の“ものづくり”で世界一を目指す男

『ものづくりは、演歌だ。』 (包行 均 著) 

著 者: 包行 均
出版社: ダイヤモンド社
発 行: 2013/01
定 価: 1,575円


【目次】
 1.お客様の“ボヤキ”をデザインする
 2.心をつかむ、ネーミングの極意
 3.営業は「売り込み」に行ってはならない!
 4.「義理」と「人情」を、世界100ヵ国にとどける
 5.遊ばざる者、働くべからず

  • ■ものづくりも演歌も“愛”が不可欠

     ユニークな経営戦略とユーモアに富んだ商品名で知られる福岡県の農業・産業用、作業・運搬車両メーカー「筑水キャニコム」は、従業員200名ほどの中小企業だが、農業用運搬車では全国トップシェアを誇る。本書は、その先頭に立つ名物会長兼CEOである著者・包行均氏が、さまざまなエピソードを通して、ものづくりに対する情熱と夢を綴ったものだ。
     同社の商品開発は顧客の“ボヤキ”から始まる。「こういう機能があると便利なんだがなあ」。クレームとか要望ではない、独り言のような顧客の何気ないつぶやき。そのつぶやき=ボヤキこそ、顧客の真のニーズであり、そのボヤキを解決する商品を開発することがメーカーの使命である。それは愛する人への強い想いを歌い上げる演歌の心にも通じる。顧客に対する熱い想いがないと、顧客のボヤキを解決して、心から喜んでもらえる商品はできない。だから、ものづくりの原点は義理と人情、つまり「演歌」なのだ、というのが著者の信条である。

  • ■「義理と人情」を世界中に届けるのが夢

     顧客の“ボヤキ”が同社の商品開発の出発点なので、営業の役割は顧客のボヤキを拾ってくること。ボヤキを拾うと、工場にその顧客の写真が貼られる。「このじいちゃんに、これこれの悩みがある。なんとかならないか、というメッセージが出る。すると、そのじいちゃん一人のためにつくってやりたいという気持ちになるんです」。そんな著者の「義理と人情」はいま、海外にも向けられている。同社は現在、40ヵ国と取引しているが、3年で100ヵ国まで販売網を広げるのが目標だ。そのため、現在30人ほど採用している外国人社員を100人まで増やし、彼らにそれぞれ母国の開拓を任せるという。現地の顧客の細かなニーズ(=ボヤキ)を外国人社員に聞き取らせ、それを商品開発に活かすことで、「義理と人情を世界中に届ける」のが著者の夢だ。本書は、「義理と人情」「演歌」など、いかにも泥臭い言葉を使いながら、日本人が忘れつつあるものづくりの「原点」を思い起こさせている。

  • ◎著者プロフィール

    農業・産業用、作業・運搬車両メーカー・株式会社筑水キャニコム代表取締役会長CEO。1949年福岡県田主丸町(現・久留米市)生まれ。1972年第一経済大学(現・日本経済大学)経済学部卒業、近藤鉄工入社。1973年筑水農機(現・筑水キャニコム)入社。営業本部長を経て、1991年社長、2012年から現職。顧客が抱える悩み(ボヤキ)に真正面から向き合い、義理と人情の心で“ボヤキ”に応える。「ものづくりは、演歌だ」を旗印に、2015年、世界100ヵ国に販路を拡大すべく、世界各地を飛び回る。