『マーケティング立国ニッポンへ』 (神岡 太郎/博報堂エンゲージメントビジネスユニット 著)

『マーケティング立国ニッポンへ』  ‐デジタル時代、再生のカギはCMO機能

『マーケティング立国ニッポンへ』  (神岡 太郎/博報堂エンゲージメントビジネスユニット 著) 

著 者: 神岡 太郎/
     博報堂エンゲージメントビジネスユニット
出版社: 日経BP社
発 行: 2013/01
定 価: 2,100円


【目次】
 1.CMO機能の芽生え――国内事例からのヒント
 2.日本企業が抱える課題の本質、CMO機能こそ解決への鍵
 3.CMO機能実践に向けたデジタル時代の5つのピース

  • ■マーケティング力で国家の底力を高める

     戦後の日本はモノづくりの強さに牽引され、一度は世界2位の経済大国まで上りつめた。それが「モノづくり立国」であった。しかしその間、企業の中で置き去りにされてきたものがある。マーケティングである。現在、日本がグローバルで苦戦している原因も、「マーケティングの弱さ」にあると言われている。
     しかし本書では、日本企業が本質的にマーケティングを苦手としているとは考えていない。マーケティングを組織的に機能させて競争力に結びつける「マネジメント」の要素が欠けているのであり、もともと持っているマーケティングの基礎能力に、この要素を加えることを本気で実施すれば、むしろ日本企業はマーケティングを武器に、世界でも極めて優位な立場に立てるはずだと論じている。「マーケティングの力を増すことで、企業の競争力を高め、国の底力を高めていく」つまり「モノづくり立国からマーケティング立国ニッポンへ」。そんなビジョンを実現させるカギが「CMO=最高マーケティング責任者」機能だ。

  • ■立場を超えてマーケティング発想

     構造不況とも言われる出版業界の中で「CMO機能」を実践したのが宝島社だ。蓮見清一社長は、業績の落ち込んでいた2006年当時、広報宣伝部に勤務の傍ら、早稲田大学大学院でマーケティングを学んでいた桜田圭子氏の「全社を挙げたマーケティング活動が必要」との提言を即断実行する。マーケティング本部を新設して社長自ら本部長=CMOとなり、「これからは各ジャンルのトップの雑誌しか、広告は入らなくなる」と"一番誌戦略"を掲げて、編集長、営業、宣伝、広報、ウェブ担当など全社各部門の責任者が一堂に会する『マーケティング会議』を開催。立場を超えてマーケティング発想で、実行していく仕組みが生かされていった。結果、3年で雑誌部門の売上倍増を達成する快挙へとつながった。本書は、宝島社がマーケティング本部長=CMOとして蓮見社長が兼任し、会議を企業経営戦略の中核に据え充実をはかるという、哲学と役割の明確化が感じられる点を評価。ここに「マーケティング立国」へのヒントをみている。

  • ◎著者プロフィール

    神岡太郎:
    一橋大学商学研究科教授。工学博士。北海道大学大学院博士課程(行動科学専攻)単位取得退学。マーケティングや情報システムが企業全体としてどう機能するか、企業の競争力にどのように結びつくか、マーケティングとITとの関係を研究対象とする。特にCIOやCMOについて関心がある。

    博報堂エンゲージメントビジネスユニット:
    デジタルメディアを中心にマーケティング戦略の立案や海外企業とのアライアンス提携など、クロスメディアコミュニケーションのデザインを専門的に行うグループ。