『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』 (山口 揚平 著)

『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』 ‐これからを幸せに生き抜くための新・資本論

『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』 (山口 揚平 著) 

著 者: 山口 揚平
出版社: ダイヤモンド社
発 行: 2013/03
定 価: 1,575円


【目次】
 序.お金とは何か?
 1.ハゲタカが跋扈し、お金でお金が殖えた時代
 2.自分の価値をお金に換える覚悟と難しさ
 3.企業や個人が国家に代わってお金をつくる世界へ
 4.お金を媒介とせず、モノや価値を直接交換できる環境の広がり
 5.信用でつながる新たなコミュニティづくり

  • ■企業や個人が信用をもとに「お金を発行する」時代

     ゴッホと違いピカソが経済的に成功したのは、彼がお金の本質を見抜いていたからだ。例えば、ピカソは少額の支払いでも好んで小切手を使った。商店主は、有名なピカソのサイン入り小切手を、銀行で現金に換えずに、大事にしまっておくからだ。ピカソは実質的にタダで買い物ができた。彼は自分の名声をいかに多くのお金に換えるか、つまり、現代の金融でいう信用創造、"キャピタライズ"を熟知していたのである。
     本書は、この数年で大きく変化しつつあるお金の本質を解説している。キーワードは「信用」だ。お金そのものの信用を担保しているのは、現在では国家だが、最近では、企業や個人も、自らを信用の母体としてお金を発行できるようになった。例えば、家電量販店発行のポイントは「企業通貨」である。個人の信用も、客観的に評価されれば、お金に換えることができるだろう。このような社会では、人々はみな「上場」しており、「株価」がついているようなものだ、と著者は指摘する。

  • ■お金より自らの価値や信用を創造することの大切さ

     企業や個人が信用を持ち、独自の「通貨」を発行する可能性が出てくると、お金という結果よりも、信用という原因のほうに人々の目が向くようになる、と著者は主張する。このため、個人として自ら価値や信用を創造することが、いっそう重要になる。
     では、信用はどのように創られるのか。デービッド・マイスターは、「信用度=(専門性+確実度+親密度)/利己心」と定義している。専門性を高め、約束を守り、親しい関係をつくり、「利己心」つまり私欲(エゴ)を減じていくことが、信用の創造につながる。しかしこの式からわかる通り、このうち信用度に特に貢献するのは、分母である私欲を減ずることだ。エゴを減じ、謙虚さを養うことが信用を築くうえで最も重要なのだ。しかし信用は繊細な磁器のようなもので、買うときは高いが簡単に壊れる。そのために著者は、個人も企業と同様、信用の残高を意識し、メンテナンスすることが必要だと説いている。

  • ◎著者プロフィール

    早稲田大学政治経済学部卒。1999年より大手コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立・起業。企業の実体を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供、2010年に同事業を売却後、2012年に買い戻した。現在はコンサルティングなど複数の事業・会社を経営する傍ら、執筆・講演を行う。専門は貨幣論・情報化社会論。