『韓国のグローバル人材育成力』(岩渕 秀樹 著)

『韓国のグローバル人材育成力』

『韓国のグローバル人材育成力』(岩渕 秀樹 著) 

著 者: 岩渕 秀樹
出版社: 講談社
発 行: 2013/02
定 価: 819円


【目次】
 1.韓国躍進の鍵を探る!
 2.韓国の「人材育成力」の現状
 3.韓国の「人材育成力」の文化的背景
 4.韓国の「人材育成力」の経済的背景
 5.韓国・新世代の実像
 6.韓国の課題―長所は短所
 7.課題克服のための取り組み
 8.日本への教訓

  • ■韓国に学べ

     1997年にアジア通貨危機の影響で債務不履行寸前となり、国際通貨基金の救済を受けるという経済危機を経験した韓国であるが、今世紀に入って急速に経済発展を続けており、科学技術の面でも、サムスン電子をはじめとする韓国企業のハイテク分野での躍進から、政府による最先端の核融合実験装置の開発まで、目覚ましい進歩を遂げている。
     躍進する韓国に比べると、日本の社会経済の状況には閉塞感は否めず、これを打ち破るアイディアが求められている。そうした中、置かれた環境の似ている隣国・韓国の経験はアイディアの宝庫と言える。
     本書において著者は、韓国の躍進を支える人材の実態、力の源、課題などについて、理解しやすいシナリオで語ろうと試みている。また、「国」という複雑なシステムを語るにあたって、一つの見方に断定せずに、様々な視点、様々な人々の意見を紹介するよう努めている。

  • ■韓国の躍進を支える人材育成力

     サムスン電子など韓国経済の躍進と、日本経済の停滞の中で、日本の経済論壇では「サムスンに学べ」「韓国に学べ」といった論評がよく聞かれる。だが、「韓国に学べ」論を考える時に一つ確認しておくべきは、あらゆる国の仕組みには長所もあれば短所もあるということである。韓国の人材育成力にも長短の両面が存在する。韓国から学ぶべきことは学びつつも、日本の長所は堂々と維持していこうという姿勢が必要である。  韓国の先端技術分野のグローバル企業の成功を眺める時、共通して存在するのが「人材育成力」である。国の持続可能な競争力の源泉である「人材育成力」について、韓国のどの部分を学ぶべきだろうか。その答えは一つではないが、「努力を重ねる勤勉さ」「努力をする者にはきちんと報いようとする社会」「世界の中で生きていこうとする国際マインド」「政治のリーダーシップ」「リーダーシップの下でのチームワーク・団結力の発揮」などをヒントとしたい。

  • ◎著者プロフィール

    神奈川県平塚市出身。同県立湘南高校卒業、東京工業大学理学部卒業、同大学院修了(修士〔理工学〕)、南デンマーク大学修了(経営学修士)。在韓国日本大使館経済部一等書記官として2007年から約3年間韓国に駐在。現在、文部科学省科学技術・学術政策局政策課長補佐、九州大学韓国研究センター学術共同研究員等を務める。共著に『グローバル競争を勝ち抜く韓国の科学技術』(丸善プラネット)。