『自分を愛する力』
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■「自己肯定感」をテーマに経験から生まれたメッセージを伝える
先天性四肢切断という重度の障害を持ちながら、メディアでの発信や教育現場などでマルチな活動を続ける乙武洋匡さん。本書では、多くの人に前向きに生きる勇気を与えてきた乙武さんが、自らのポジティブな生き方を支えている「自己肯定感」をテーマに、これまでの経験とそこから得ることができた教訓、ものの考え方を伝えている。
乙武さんのご両親は、何かが「できない」ことで叱ることはなかった。「できた」ときはたっぷりほめる。乙武さんが生まれたときに「一生寝たきりかもしれない」と覚悟したご両親にとっては、どんなことでも「できる」ことは喜びでしかなかったのだ。また、乙武さんは他の子と比べられることもなかった。比較対象になる子どもが周りにいなかったからだ。ほめられ続け、オリジナリティを大切にしながら育てられた乙武さんは自信を持ち、自分の頭で考え、自分の判断にもとづいて行動する「自己肯定感」に満ちた人間に育っていったのである。 -
■できないことは仕方ない、できることに全力を尽くそう
重度の障害を負っていた乙武さんは「手足がない」ことに対し、「隠しようがないし、改善しようもない」と割り切るしかなかった。「できないものは仕方ない、その代わり、できることで全力を尽くそう」と。障害のない人であっても、自分の弱点や欠点をそんなふうに考えることで、肩の力を抜いて、前向きに人生を歩んでいけるのではないだろうか。
小学校の先生となった乙武さんは、授業の中で金子みすゞの「わたしと小鳥とすずと」という詩を取り上げたことがある。その詩の「みんなちがって、みんないい」という一節を、乙武さんはすべての人にメッセージとして届けたいという。ジグソーパズルは、一つひとつのピースはいびつだが、つなぎあわせれば美しい絵や写真ができあがる。私たち一人ひとりも、それぞれが「できること」「得意なこと」をやり、「できないこと」「苦手なこと」を補い合ってつながっていけば、美しい人間関係ができあがるはずなのだ。 -
◎著者プロフィール
1976年東京都生まれ。早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)がベストセラーに。同大学卒業後スポーツライターとして活躍。その後、東京都新宿区教育委員会非常勤職員、杉並区立杉並第四小学校教諭を歴任。教員時代の経験をもとにした小説『だいじょうぶ3組』(講談社文庫)は映画化され自身も出演。現在は都内で地域との結びつきを重視する「まちの保育園」の運営に携わるほか、2013年3月に東京都教育委員に就任。