『「これからの世界」で働く君たちへ』 (山元 賢治 著)
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■コミュニケーションとは、相手と本気で向かい合う「覚悟」である
著者の山元氏は大学を卒業してから30年間、一貫して外資系企業で働き、オラクルのラリー・エリソンやアップルのスティーブ・ジョブズ、ティム・クックなどビジネス界の巨人とともに仕事をしてきた。本書は、アップル・ジャパンの社長時代に「完全に死んでいた」日本のアップルを復活させた経験などから、若者たちに向けて、これからの変化の時代を生き抜くための「新しい当たり前」(世界標準)を40項目にまとめたものである。
とくに著者が強調しているのは、相手と本気で向かい合う「覚悟」を持ったコミュニケーションだ。ビジネスの現場では、直接面と向かっては言いにくい状況は日常的にある。そんなとき、日本人はメールに頼ろうとする。しかしメールの技術をいくら磨いても、相手と向き合うという覚悟を避けたコミュニケーションでは、何も前進させることができない。著者は、かつて部下に一貫して言い続けてきたという。「姿が見える範囲で1対1のメールを送ったら、即クビだ」と。 -
■これからの世界を生き抜くために不可欠な「話す」練習
これからのビジネスにプレゼンテーション・スキルは欠かせないが、日本人は「話す」よりも「読む」教育を受けて育っているので、プレゼンでも講演でも、事前に書いた資料を「読む」スタイルになりがちだ。しかし、「話す」とは聴く人とのコミュニケーションである。「読む」は自分の考えを述べているだけで、対話になっていない。アップルのスティーブ・ジョブズのプレゼンが、聴く人を魅了し、興奮させたのは、よく言われる「三つの法則」や「ビジュアルスライド」といったテクニックを駆使したからではなく、「話す」ことによって、聴衆との対話が生まれ、聴衆との一体感を作り出していたからである。その点、メールの多用は「話す」「対話する」ことからの逃避となる。メールは、日本においてはコミュニケーションツールかもしれないが、「世界標準」では、伝達ツールに過ぎない。これからの世界を生き抜くために、若い人はぜひ「話す」練習を積んでほしい、と著者は熱く語っている。
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◎著者プロフィール
神戸大学卒業。日本IBM、日本オラクル等を経て、EMCジャパン副社長。2002年日本オラクルに復帰、専務としてBtoBの巨人、ラリー・エリソンと仕事をする。2004年にスティーブ・ジョブズと出会い、アップル・ジャパンの代表取締役に就任。iPodビジネスの立ち上げからiPhoneを市場に送り出すまで関わり、アップルの復活に貢献する。現在、株式会社コミュニカ代表取締役をはじめ数社の取締役、顧問等を兼務するほか、私塾「山元塾」を主宰し、これからの世界を生き抜く若者を育成している。