『ビッグデータの覇者たち』 (海部 美知 著)

『ビッグデータの覇者たち』

『ビッグデータの覇者たち』 (海部 美知 著) 

著 者:海部 美知
出版社:講談社
発 行:2013/04
定 価:798円


【目次】
 1.なぜ今「ビッグデータ」なのか
 2.データ世界の考え方
 3.ビッグデータを全身で体現するグーグル
 4.主要ネット企業の勝敗を分ける「データ」
 5.世界を良くするためのデータ技術
 6.ビッグデータ技術の世界
 7.ビッグデータの現在と未来

  • ■「ビッグデータ(大きなデータ)」とは何か

     ビッグデータという言葉が、テクノロジー業界だけでなく、企業経営の分野などでもよく聞かれるようになった。ビッグデータという現象が、企業経営や消費者の日常生活にどのような影響を与えるのか。ビッグデータはただのバズワード(流行り言葉)に過ぎないのか、それとも世界を変えうるのか、という観点で本書は書き進められている。
     まず、この「大きなデータ」とは一体何のことなのだろうか。著者は、「人間の頭脳で扱える範囲を超えた膨大な量のデータを、処理・分析して活用する仕組み」と説明する。「膨大なデータ」というのは、ビッグデータという名前の由来でもある。どの程度の膨大さかというと、例えばツイッターで飛び交っている世界中の何億人ものつぶやき全部などを想像すると、まさに気が遠くなるほどの膨大さであることがわかる。その多種のデータを一見直接関係なさそうに見えるものまで含め、組み合わせて分析に活用するというのがビッグデータ活用のポイントである。

  • ■身近にあるビッグデータ

     身近なビッグデータの活用例として、グーグル検索がある。グーグルの検索技術は、ユーザーの過去の検索履歴、現在いる場所、行動情報など、あらゆるものを指標とし、また、住んでいる国、仕事、趣味、年齢層などによって、検索結果がカスタマイズされる。多種で膨大なデータを原料とし、なるべく正確に予測するのがビッグデータの力である。
     ビッグデータと言えば、必ずプライバシー問題が挙げられる。大多数のデータはなんらかの形で人の属性や行動と関わっているからだ。ビッグデータのシステムとは、個人情報を含むデータを誰かに差し出して、その対価としてサービスを受けるということなので、どこで線を引くのが適切なのかというバランスの問題となる。このバランスは、国や地域によっても、年代や性別によっても、あるいは個人によっても異なる。
     ビッグデータ関係者は、「ビッグデータ=プライバシー侵害」という誤ったレッテルが貼られないようにユーザーとの信頼関係を築く必要がある。

  • ◎著者プロフィール

    1960年神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学MBA取得。本田技研工業、NTTアメリカなどを経て、現在、コンサルティング会社ENOTECH Consulting代表を務める。著書に『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー新書)、ブログに「Tech Mom from Silicon Valley」がある。シリコンバレー在住。