『逆算力』 (高岡 浩三/おちまさと 著)
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■「42歳で死ぬ」ことを前提に生きることから生まれた成功哲学
スイスの食品メーカー・ネスレの日本法人、ネスレ日本の社長兼CEOを務める高岡浩三氏は本書刊行時点で53歳だが、10歳の頃から「自分は42歳で死ぬ」ことを前提として生きてきたという。本書では、そんな高岡氏の半生、ネスレ日本での業績を振り返りながら、「42歳」というゴールから「逆算」した人生プランを立てることで生まれた思考習慣、行動力、リーダーシップ、創造力などについて論じている。
「42歳〆切」を意識するようになったきっかけは、高岡氏が10歳のときに父親が42歳で亡くなったこと。父方の祖父も42歳で他界していたため、自分も42歳ぐらいで死ぬのだろうと思ったのだという。以来、節目ごとに42歳を意識することに。当時、ほとんど無名だったネスレ日本に就職したのも、「ブランドを作る仕事をしたい」という志を"42歳までに"実現するためには、実力主義の外資系企業のほうが可能性が高いと考えたからだ。 -
■「チェンジ・ザ・ルール」「本質を考え抜く」思考習慣が形成される
高岡氏は大学在学中に評論家・竹村健一氏のテニスコーチを務めたことがある。多忙だった竹村氏は、少ない時間で早く上達する練習法を要求した。高岡氏は、この出会いから、42歳までの限られた時間を生きるためには「人と同じことをしない」ことが重要だということに気付く。ここで形成された高岡氏の「チェンジ・ザ・ルール」(人とは違う、それまでの常識から外れたことを考える)という思考習慣は、その後のネスレ日本での数々の大胆な販売戦略などに生かされていく。
チョコレート「キットカット」の受験生応援キャンペーンは高岡氏が42歳の時の仕事だ。ここで同氏は、口コミで広がっていた「きっと勝つ」という語呂合わせは直接的には使わずに、受験で宿泊するホテルで配布するなど、「受験の緊張を和らげる」というキットカットの"本質"をアピールするものにした。「本質を考え抜く」ことも、「42歳〆切」で時間がない中から生まれた習慣だったのだ。 -
◎著者プロフィール
高岡 浩三:
ネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。1983年神戸大学経営学部卒。同年、ネスレ日本株式会社入社(営業本部東京支店)。各種ブランドマネジャー等を経て、2005年、ネスレコンフェクショナリー株式会社代表取締役社長に就任。2010年11月より現職。
おちまさと:
プロデューサー。1965年生まれ。数多くのヒット番組、WEBサイト、ファッション、企業ブランディングまでジャンルを越えて活躍している。著書多数。