『雑談力が上がる話し方』 (齋藤 孝 著)
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■人間関係における"水回り"的な役割を持つ雑談
新学期の教室、新しい部署のオフィス、パーティの会場。せっかくの知りあうチャンスなのに、どうやって声をかければいいのか、きっかけがつかめないという悩みを持つ人が多い。こうした場面で必要なのは、トーク術ではなく、雑談をする力である。雑談には、相手との「気まずさ」を解消し、場の空気を作り、互いの距離を縮める効果があり、人間関係やコミュニケーションにおける"水回り"的な役割を持っている。家における水回りのごとく、人間関係を気詰まりなく、スムーズに動かしてゆくために不可欠なコミュニケーションのファクターなのである。 本書では、ベストセラー『声に出して読みたい日本語』を世に送り出した著者が、一見時間のムダと思える雑談が、仕事はもちろんのこと、あらゆる場で必要とされる最強の能力であることを解き明かしながら、雑談力を身につけるためのノウハウをユニークな視点から伝えている。
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■雑談はセーフティネットの効果を果たす
雑談力とは、会話を利用して場の空気を生み出す技術のことで、"人間同士のお付き合い"に近い。自分の人間性や個性を言葉にして、それを相手と触れ合わせることで、沈黙や居場所のなさといった気詰まりをほぐし、馴染みやすい雰囲気を作る。ちょっとしたコツを押さえておけば、誰でも雑談力は上達する。 ビジネスでも雑談はセーフティネットとして機能する。例えば、犬を飼っている家にやってくる配達人は、ほとんどの場合、犬を無視するが、その中で犬の名前まで覚えてくれている配達人がいると、その時点で、他の宅配便業者とは一線を画した特別な存在になる。すると、その配達人が仕事上でミスをしても許されてしまう。雑談で打ちとけた関係ができているため、少々の失敗は気にしない状況になるのだ。良好な人間関係を築ける雑談力が、仕事相手との間で非常に効果的なクッションの役割を果たす。雑談は仕事上のミスをもカバーするのである。
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◎著者プロフィール
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大大学院教育学研究科学校教育学専攻博士課程等を経て、現在、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に、ベストセラーとなった『声に出して読みたい日本語』(草思社)をはじめ、『1分で大切なことを伝える技術』(PHP新書)、『地アタマを鍛える知的勉強法』(講談社現代新書)、『売れる! ネーミング発想塾』(ダイヤモンド社)など多数。