『一流の想像力』 (高野 登 著)
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■仕事を飛躍させる想像力
どんな時代にも、楽しそうに働いて結果を出す人がいる。彼らは他の人と一体どこが違うのか? その答えが「想像力」である。
本書では、毎日想定外のことが起こるホテルで想像力を鍛えに鍛えられたというリッツ・カールトン元日本支社長である著者が、「デートの相手にすっぽかされた男性が、笑顔でレストランから帰っていった」など、想像力が生んだ信じられない実話の数々を紹介しながら、想像力とはどんな力なのかを明らかにし、仕事に想像力を活用して飛躍させるヒントを語っている。ちなみに、待ち合わせをすっぽかされた男性に、プロのサービスマンなら、小さな声でそっと「珍しいですね。10勝1敗ですか?」と冗談めかした言葉をかけ、男性の気を楽にさせる。さらに、「バーで一杯飲んで帰りますか?」と場所を移す提案をする。「お客様が席を立つための花道を、どう用意してあげるか?」と考える想像力がサービスマンには必要なのだ。 -
■お客様の立場に立ち、想像力に溢れた組織を作る
今、中近東をはじめとするイスラム圏内では、日本製ではなく、韓国の大手家電企業のテレビが売れている。その理由は、1日5回、お祈りの時間になるとコーランが流れる仕組みにある。楽しくテレビを見ることができ、お祈りの時間も忘れないですむ一石二鳥の便利さのため、売れているのだ。これは、テレビを「見る人の立場に立った」発想であり、相手と同じ条件のなかに我が身を置いて考えた想像力の賜物である。また、売上が常に下位だった住宅メーカーの支店では、「何をすればお客様に喜んでいただけるのか」とアイデアを出し合い、自転車のお客様がいれば、ピカピカに磨いてタイヤに空気まで入れたり、雨の日に来たお客様のために入り口にタオルを積んだり、営業よりもお客様の思いを想像することを重視した。この結果、お客様が住宅を買い始め、その支店は関東一の売上を上げるほどに生まれ変わった。想像力を発揮できるような組織を作れば、組織は遠く、高く、飛ぶことができるのだ。
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◎著者プロフィール
1953年、長野県生まれ。ホテルスクール卒業後、1974年に渡米。NYプラザホテルなどでマネジメントを経験。1990年、サンフランシスコのリッツ・カールトンの開業に参画。1994年に日本支社長として帰国。大阪、東京のリッツ・カールトンの開業をサポート。2009年、長野市長選挙出馬のため退職するも惜敗。2010年、人とホスピタリティ研究所設立。著書に『リッツ・カールトンと日本人の流儀』(ポプラ社)など。