『知財で戦え』 (鳴川 和代 著)

『知財で戦え』  ‐Gamechanging IP

『知財で戦え』  (鳴川 和代 著) 

著 者:鳴川 和代
出版社:ダイヤモンド社
発 行:2013/05
定 価:1,680円


【目次】
 序.なぜ日本はモノづくりで勝てなくなったのか
 1.モノづくりから知的財産の時代へ
 2.世界に伍する特許のプロフェッショナル
 3.すべては顧客優先へ
 4.仕事を通してこそ人は成長する
 5.山本秀策 その哲学

  • ■世界から遅れている特許ビジネス

     日本のお家芸だった家電やエレクトロニクス産業は、今や新興国に席巻され、衰退するばかりである。天然資源の乏しい日本が今後、生き残りを賭ける道は知財戦略以外にはない。本書は、世界最先端の知財を扱い、依頼の80%はアメリカからという国際的に評価の高い『山本秀策特許事務所』の山本所長への取材をもとに、世界で戦うために知的財産をどう考えるかを論じたものである。  アメリカでは、特許権は「他者を排除する権利」と捉える。知財は、より戦略的なビジネスの武器であり、特許権を利用して攻め込むものである。一方日本では、特許権とは一般に「他者から自己を守る権利」である。つまり日本では、特許で他者を攻撃するというより、特許法で防御するという認識が強い。特許を武器にして攻撃をかけ、他者を排除して自己のビジネスを拡大する、マーケットでより優位な地位を築くという発想がない。この認識が、世界から遅れをとる原因となっている。

  • ■国力を落としている特許法

     日本が知財戦略で世界と渡り合うには、特許法の改正が急務である。特に特許法73条は廃止すべきだと山本氏は主張する。これは、大学と企業など共同で特許を出願して特許権を共有するような場合、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ他企業などにライセンスすることができないというものだ。一見、当然に思える法律だが、これがネックとなって、莫大なライセンス料を得るチャンスを逃すことが多い。例えば、海外の企業が、ある大学の優れた研究に注目して、高額でそのライセンスを買いたいと思っても、共有者の企業は、その海外企業に販路を奪われることを恐れて拒否する。こうして日本の大学は、どんなに優れた研究をしても、海外の大学と比較してライセンス収入が極めて低いのである。73条が廃止されれば、日本の大学はもっとライセンス収入が増え、豊富な研究費のもとでさらに優れた研究ができるようになる。それは結果的に国益にも資することになるのだ。

  • ◎著者プロフィール

    大阪府生まれ。近畿大学法学部卒業。住友信託銀行勤務の後、フリーペーパー記者、広告代理店などを経て1990年にフリーランスライターとして独立。近畿、大阪を活動の拠点に、大手企業のトップインタビューをはじめ情報誌、地方紙などに幅広く携わる。現在はIT関連記事などを中心に雑誌、Webなどで執筆を続ける傍ら、ライフワークの源氏物語研究にも取り組んでいる。