『ネット選挙』 (西田 亮介 著)
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■2013年参院選から導入された「ネット選挙」の意義を論じる
2013年4月19日、参議院本会議にて「公職選挙法の一部を改正する法律案」が全会一致で可決・成立。それに従い同年夏の参議院議員通常選挙から、いわゆる「ネット選挙」が解禁された。本書ではこの「ネット選挙」解禁について、その意義や特徴だけでなく、これからの日本社会全体にどのような影響を与えうるか等、大局的な立場からも論じている。 今回解禁されたネット選挙とは、ウェブサイト、ブログ、SNSなどインターネット上の情報発信手段による選挙運動のこと。著者はまず、この解禁が、"何となく"時代の趨勢に合わせただけの「理念なき解禁」ではないかと指摘する。新しいメディアの登場に合わせるため、という理由は、いまだにテレビなどでの選挙運動が制限されていることから通用しない。「お金がかからない」とも言われるが、実際にはPR業者への外注費用が発生している。また、他国の事例を見ても投票率との因果関係は認められないのである。
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■日本社会の「漸進的改良主義」への価値観転換のきっかけに
著者の考えるネット選挙の意義は、社会全体の「漸進的改良主義」への価値観の転換、というものだ。漸進的改良主義とは、インターネットの基本的な設計思想であり、完成度が十分でなくても、まずプロトタイプを公開し、オープンにアイディアや知識を持ち寄ることで修正、改良を加えていく、という考え方のことである。現状、ほとんどのウェブサービスやソフトウェアがそうした考え方のもとで開発・運営されている。 日本の法体系や政策プロセスの特徴は「周到にリスクを回避しながらクローズドな環境(官僚組織による根回しなど)で検討し、精度の高いものをめざす」というものである。旧公職選挙法もこの考え方に則っており、もっと言えば日本社会のあらゆる所にそういった考え方が蔓延している。しかし、ネット選挙解禁をきっかけに、その価値観が覆される可能性がある。"ネット"を導入することで、その方法だけでなく"考え方"も一緒に広がることが期待できるのだ。
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◎著者プロフィール
立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。同助教、独立行政法人中小機構経営支援情報センターリサーチャー、東洋大学・学習院大学・デジタルハリウッド大学大学院非常勤講師などを経て現職。専門は情報社会論と公共政策学、情報と政治、ソーシャルビジネス、協働推進、地域産業振興など。