『「動かない」と人は病む』 (大川 弥生 著)

『「動かない」と人は病む』  ‐生活不活発病とは何か

『「動かない」と人は病む』 (大川 弥生 著) 

著 者:大川 弥生
出版社:講談社
発 行:2013/05
定 価:798円


【目次】
 1.本人と家族の積極的取り組みを
 2.外の世界とのかかわり
 3.日常生活の中で
 4.障害に生活不活発病が加わることも多い
 5.「寝たきりを防ぐ」から
   「つくられた歩行不能を防ぐ」時代へ
 6.遠隔介護予防のすすめ
 7.病気としての生活不活発病の特徴
 8.生活不活発病研究の歴史
 9.善意の支援が生活不活発病を生む?
 10.人が「生きる」ことの構造

  • ■一般には馴染みのうすい「生活不活発病」についてくわしく解説

     「外出せず運動もしないから体がなまった」などということは老若問わず我々が日常的に経験することだ。しかし、それが生活に支障をきたすほどの症状になった場合、医学上の「病気」と認定されることがある。それが「生活不活発病」だ。「廃用症候群」とも呼ばれ、出かけたり運動したりせず、生活が"不活発"になったことが原因で、体や頭のはたらき(機能)が低下する疾病で、とくに高齢者に多く見られるという。本書は、その生活不活発病の原因から予防、治療などについてくわしく説明している。  生活が不活発になるきっかけは三つに分類できる。一つは「社会参加の低下」。環境や境遇の変化、遠慮、社会通念などにより、集まりへの参加、人との会話が減ることなどだ。二つ目は「生活動作自体のやりにくさ」。他の病気や怪我のせいで体が動かせなくなることなどを指す。三つ目は「生活動作の量的制限」。やろうと思うのに"していない"状態をいう。

  • ■社会参加から生活動作、心身機能という「上から下へ」の流れを把握

     人が生きるということは、大きく「社会参加」「生活動作」「心身機能」の三つのレベルに分けられ、「社会参加」を頂点とした三層構造になっている。社会参加は生きることの目的であり、そのための手段として、「歩く」「話す」などの生活動作がある。そして生活動作の要素として、「足を動かす」「口を開く」などの心身機能がある。  生活不活発病は、この三層の「上から下への因果関係」で起こる。すなわち、社会参加の制約が、生活動作の低下を引き起こし、そのことが心身機能の低下をもたらすのである。したがって治療や予防についても、この「上から下へ」で考える必要がある。  だが、他の病気については「下から上へ」で考えられることが多い。心身機能が低下したから病気になり、社会参加ができない、というように。生活不活発病については逆の考え方をしなければならない。この発想の転換が、患者・利用者中心の医療・介護・福祉の発展にもつながっていくのである。

  • ◎著者プロフィール

    医師。佐賀県生まれ。久留米大学医学部大学院修了。医学博士。東京大学助手、帝京大学助教授を経て、現在、独立行政法人国立長寿医療研究センター生活機能賦活研究部部長。専門は、生活機能学、リハビリテーション医学、介護学。