『会社の哲学』 (奥村 宏 著)
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■巨大な力を持つ会社=法人とは何か
福島原発事故を起こしたのは東京電力である。だが、東京電力は何ら罰せられない。日本の刑法では、犯罪とは意思と行為の結果であり、身体がなく、頭脳もない法人には犯罪能力はなく、罰することはできない、とされているからである。
本書で著者は、このような不合理はあってよいのか、巨大な力を持って個人の上にのしかかり、さらに人類の存在そのものをも脅かしている会社=法人とは何か、と問いかける。この問題を問い直し、解決しなければ、やがて文明は崩壊してしまうかもしれないというのだ。本書では半世紀にわたって会社とは何かを追究してきた著者が、「企業改革」という難題が突きつけられているものの、その解決の目途はたたず、あくまでも現在の会社を守ろうとしている現状社会について述べ、「会社は変わらなければならない」と主張するとともに、会社を「人間が仕事をする場所」に変えていくための方向を示唆する。 -
■企業改革は「会社とは何か」を哲学的に問い直すことから
21世紀最大の課題は、企業改革であるといっても過言ではない。現在の大企業は人々に働く場所を提供することができなくなっている。さらに、人類は大気汚染や公害に悩まされており、地球温暖化によって存在が脅かされている。このような地球規模的危機を作り出したのは、大企業=巨大株式会社である。会社をどうするのか? 会社を変えなければ、人類は大変な不幸に直面することになるが、それでもよいのか?
人々に問われているのは、「会社はこれからどうなるのか」ではなく、「これから会社をどうするのか」である。その問いに答えるためには、会社とはそもそも人類にとって何であるのか、ということを哲学的に問い直すことが必要である。そしてそれが、会社を「人間が仕事をする場所」に変えていくことにつながるのだ。 -
◎著者プロフィール
1930年生まれ。新聞記者、研究所員、大学教授を経て、現在は会社学研究家。主な著書に、『日本の株式会社』『法人資本主義の運命』『東電解体』『パナソニックは終わるのか』(以上、東洋経済新報社)、『会社本位主義は崩れるか』『株式会社に社会的責任はあるか』(以上、岩波書店)、『エンロンの衝撃』『会社はどこへ行く』(以上、NTT出版)、『三菱とは何か』(太田出版)、『会社をどう変えるか』(筑摩書房)などがある。