『心を操るウイルス』 (リチャード・ブロディ 著/森 弘之 訳)
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■会話や宣伝、教育、勧誘などによって広がるマインド・ウイルス
私たちは、普段のコミュニケーションや学習、メディアの視聴などで、日々情報の受け渡しを行っており、その情報は心や行動にさまざまな影響を及ぼす。本書では、そのように心の中に侵入してきて私たちの心をプログラムする情報を「ミーム」、さらにそれが悪影響を及ぼす場合は「マインド・ウイルス」と表現。生物学的なウイルスやコンピュータ・ウイルスに類似した動きをするものとして、そのメカニズムを分析している。
マインド・ウイルスは、たとえばテレビCMや宗教の勧誘、教育などによって人の心に「侵入」する。そして人々が行うコミュニケーション(口コミ)によって「複製」を増やす。複製されたウイルスは、新しくプログラムし直され、新たな「指令」を発する。つまり、教育などによってウイルスを取り込んだ人が、ウイルスの影響のもとさまざまな行動をする、というようなことだ。こうして、マインド・ウイルスは「拡散」していく。 -
■反復や一度に大量の情報を送りこむことなどで侵入してくる
ミームあるいはマインド・ウイルスが侵入するルートには、「反復による条件づけ」「認知的不協和」「トロイの木馬」の3種がある。 「反復による条件づけ」は、同じことを何度も繰り返し聞かせること。「認知的不協和」とは、人が矛盾したり混乱したりしたときに、それを解決、解釈するために新しい情報(ミーム)を得て状況を整理しようとすることをいう。たとえば友人が自分に対してとまどいを見せていて、その理由がわからないとき、「彼は僕の昼食代を3回連続で払わされているからとまどっているんだ」というように解釈したりする。それが正しいかどうかに関わりなく、その解釈や解決法は新しいミームとして行動に影響を及ぼす。
「トロイの木馬」とは、ある一つのミームに注意を向けさせ、一緒に他のミームも送りこむこと。大量の情報が一緒に入ってくるため、間違ったものを峻別することができなくなるのだ。これらのルートは、広告・宣伝において意図的に使用されることもある。 -
◎著者プロフィール
著作家。1981年にハーバード大学を中退してマイクロソフト社に入社。Microsoft Wordの開発者、ビル・ゲイツの技術的なアシスタントとして活躍。同社を辞めた後は、米国で人気の高いトーク番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」をはじめ、数々のテレビ番組やラジオ番組に出演するなど幅広く活躍。現在も、さまざまなことに幅広い興味をもって取り組んでいる。