『松浦弥太郎の仕事術』

『松浦弥太郎の仕事術』

『松浦弥太郎の仕事術』 

著 者:松浦 弥太郎
出版社:朝日新聞出版
発 行:2012/07
定 価:630円


【目次】
 1.働くこととは
 2.仕事と暮らしを楽しむ生き方
 3.人とかかわって働くこと
 4.仕事のための思考と発想
 5.時間に追われず、情報に流されず
 6.自分のキャリアをデザインする

  • ■仕事を通じて人を幸せにしていくことを目標にする

     就職、転職、肩書がついたときなど、どんな人でも滝をさかのぼり始めるというときがあるが、社会という激しく流れる滝をさかのぼることは容易ではなく、滝をのぼっては落ち、落ちてはのぼりを繰り返す。本書は、『暮しの手帖』編集長である著者が、滝をのぼり続けるような日々の中で、知ったこと、学んだこと、大切だと思ったこと、発見したこと、感動したことなどをまとめたもので、滝に挑み続けている人たちに向けて、エールを送るものとなっている。
     なかでも著者は、仕事の目的は「自分が何をしたいのか?」ではなく、「自分を社会でどう役立てるか」であると強調する。高校をドロップアウトして自分の存在理由も分からず肉体労働をしていた著者は、雇い主から命じられた煙草を走って大急ぎで買ってきたときに「おっ、早いな」とほめられた。この出来事には心が躍るほどの喜びがあり、自分が役に立ったという実感があったという。仕事を通じて人を幸せにしていくことを目標にすれば、よい仕事ができるのだ。

  • ■仕事や暮らしのなかで幸せを運んできてくれるのは"人"

     組織の中でより大きな仕事をするとき、すべてを自分一人でやろうとしたら、立ちゆかなくなる。そこで大切なのは、人を信じて、人に任せることだ。「自分が」という意識を捨て去り、「この仕事はあなたが主役です」とお願いし、たとえ相手がアルバイトであっても仕事の成果は主役に渡す。すると、本当にその人たちは主役へと育っていくのである。
     また「一人の人の後ろには50人がいる」。家族、友人、お世話になった人、仕事関係者など、どんな人の背後にも最低50人の人間関係がある。一人を敵に回せば、50人の敵ができる。逆に、一人に好かれれば、50人の味方ができるかもしれない。人間関係とはそれだけ大切であり、目の前の人と真摯に向き合うべきなのである。翻って考えれば、私たちは人とのつながりという関係性によって、生きている幸せや喜びが得られるということだ。仕事と暮らしにおいて、いつでもどんなときでも、自分に幸せを運んできてくれるのは"人"であることを忘れてはならない。

  • ◎著者プロフィール

    『暮しの手帖』編集長、「COW BOOKS」代表、文筆家。1965年東京都生まれ。18歳で渡米。アメリカの書店文化に惹かれ、帰国後、オールドマガジン専門店を赤坂に開業。2000年トラックによる移動書店をスタートさせ、02年「COW BOOKS」を開業。06年より『暮しの手帖』編集長に就任。著書に『本業失格』『くちぶえサンドイッチ』『今日もていねいに。』『あたらしい あたりまえ。』など多数。