『内向型人間の時代』(スーザン・ケイン 著/古草 秀子 訳)

『内向型人間の時代』‐社会を変える静かな人の力

『内向型人間の時代』(スーザン・ケイン 著/古草 秀子 訳) 

著 者:スーザン・ケイン
訳 者:古草 秀子
出版社:講談社
発 行:2013/05
定 価:1,890円


【目次】
 1.外向型が理想とされる社会
 2.持って生まれた性質は、あなたの本質か?
 3.すべての文化が外向型を理想としているのか?
 4.愛すること、働くこと

  • ■外向型が評価される社会で過小評価されがちな内向型人間

     現代社会、とりわけビジネスの世界では、活発に行動し、人と上手にコミュニケーションをとることのできる「外向型」の人間が“優秀である”と評価されがちだ。しかし本書では、外向型の陰に隠れた内向型人間の存在や働きこそが社会にとって必要不可欠であるとし、内向型人間だからこそ発揮できる能力やその社会的役割などについて論じている。
     「内向型」と「外向型」では、自身がうまく機能するために必要な外部からの刺激レベルが異なる。内向型は、親しい友人と親密な時間を過ごす、読書をするといった低刺激がちょうどいいと感じ、外向型は、初対面の人と会う、激しいスポーツをするなど高刺激を楽しむ傾向にある。また、外向型はすばやく行動し、一度に複数のことをこなすとともに、リスクをむしろ積極的に取りにいくというパーソナリティだ。それに対し内向型はゆっくりと慎重に行動し、一つのことにおそろしいほどの集中力を発揮する。

  • 積極的に開拓する外向型とリスクを察知する内向型の両者が必要不可欠

     20世紀に入った頃、アメリカは「人格の文化」から「性格の文化」へと変容した。すなわち、本質的に「どういう人間か」よりも「人からどう見られるか」が重視されるようになったのである。目立つ人、面白い人が人気となり、内向型は評価されづらくなった。
     しかし21世紀に登場したソーシャル・メディアは、内向型に力を与えた。インターネット・メディアの成功者には、内向型人間が確実にいるだろう。彼らは200人いる講義室で自ら発言することはしないが、ブログで200万人を相手に語るのは平気なのだ。
     進化生物学者デヴィッド・スローン・ウィルソンによれば、内向型と外向型は生き延びるための両極端の戦略を担っており、両者の存在が不可欠だという。外向型が攻撃的に新しいものを開拓するかたわらで、内向型は忍び寄る危険を察知し警戒する。そのようなバランスの一極を担う者として、内向型の存在意義はきわめて大きいのである。

  • ◎著者プロフィール

    プリンストン大学、ハーバード大学ロースクール卒業。ウォール街の弁護士を経て、ライターに転身。『ニューヨーク・タイムズ』『タイムズ』などに、内気な性格に関する記事を寄稿している。また、企業や大学などでコミュニケーション・交渉術の講師も務める。2013年には、コミュニケーションやリーダーシップ・スキルの向上を目的とする非営利教育団体(トーストマスターズ)から、最高の栄誉であるGolden Gavel賞を授与された。